[ひとりごと(1998.3.27)]

リュウミンL-KLが詰まるわけ

─トラブルのその後のその後─

 しばらく前の「トラブルのその後」で、システムフォントの「細明朝体」や「中ゴシック体」を使うより「リュウミンL-KL」「ゴシックBBB」を使うべしと書いたのだが、実際にそれらをインストールしたところ、やっぱり問題ありと言わなければならないようだ。

 問題になるのはQuarkXPressの縦組みだ。
「リュウミンL-KL」は画面上で文字間が詰まる。たとえば20字がピタリと入る縦組みのテキストボックスを作ってテキストを入れると、「リュウミンL-KL」は21字入ってしまう。「ゴシックBBB」は逆に間延びし、19字しか入らない。
 もっとも、画面上でこのようになるので、プリントしたら文字組みが崩れるというトラブルは解決できる。しかし、なぜ詰まるのかということだ。

 上高地仁さんのページ「DTP-S」のコラムを読んだり、京都機関紙印刷センターの松山氏に教えてもらったりするなかで、どうやら、いま話題になっているCIDフォントに通じる問題だということがわかってきた(CIDフォントが何かについては、詳しくはわからないのでこの際省略)。
 簡単に言えば、モリサワの現在のフォント(OCFフォントと呼ばれる)には、完全な全角でないフォントが含まれていることに原因があるようだ。
 モリサワが登録ユーザー宛に送ってきたCD-ROM「CIDご案内及びBitmap集」の「OCFとCID混在の注意点」を読むと、このあたりのことが詳しく書かれている。

 フォントの大きさを表すのには、下の図(モリサワのCD-ROMより)のように、ウィドマックス(WidMax)、アセント(Ascent)、デセント(Descent)があるそうだ。このうちウィドマックスとは、ようするに文字幅を指し、実はここに注目する必要がある。

フォント用語

 この文字幅は、モリサワのほとんどのフォントで「4096」なのだそうだが、次の4書体だけが違うという。
●リュウミンL-KL=3866
●太ミンA101=3883
●見出しゴMB31=3993
●中ゴシックBBB=4157
 これを見ると、上の三つは文字幅が狭く、中ゴシックBBBは広いことがわかる。
 そしてQuarkXPressは、縦組みの文字送りにこのウィドマックス値を使うのだという。20字のテキストボックスで、リュウミンL-KLが詰まり、中ゴシックBBBが間延びした原因はこれだったのだ。

 ちなみに、メールで教えていただいた松山氏の計算によれば、他の完全な全角文字に対する比率は以下の通りだ。
●リュウミンL-KL=94.4%
●太ミン=94.8%
●見出しゴ=97.5%
●中ゴシックBBB=101.5%

 さらに、QuarkXPressの全角文字を基準にしたトラッキング値に換算してみると、およそ次の通りになる。
●リュウミンL-KL=-11
●太ミン=-10
●見出しゴ=-5
●中ゴシックBBB=+3
 ここまでくると、日頃QuarkXPressを使っている人なら、なるほど詰まるわけだし延びるわけだと納得できるのではなかろうか(もっとも、太ミンはなぜか詰まらなかったと松山氏。小国も実験して確認)。

 では、なぜ「ビブロス細明朝外字」で全体を指定した時には文字が詰まらなかったのか。それは、「ビブロス細明朝外字」自体が持つウィドマックス値が使われるから(松山氏による)だという。画面上で確認する限り、おそらくその値は「4096」なのだろう。これは「ビブロス中ゴシック外字」でも同じだ。
 ということは結局、上記4書体で全角幅の文字送りを使いたければビブロスフォントを指定するのが最もベターということになる。私は当面、この方法でいこうと思っている。
 そうでなければ、トラッキングによる調整(上記のマイナス値をプラス値にする)が必要になる。

 さて、OCFフォントからCIDフォントへの移行で何が問題になっているかということを最後に少し。
 モリサワはCIDフォントで、上記のうち「中ゴシックBBB」を除く三つのフォントのウィドマックス値を「4096」に訂正するそうだ(「中ゴシックBBB」は「4157」のまま)。これ自身は、私は歓迎したい。ベタ組みをするためには都合がよいからだ。
 ところが、これらのOCFフォントで作ったドキュメントをCIDフォントの入ったプリンタで出力すると、フォント名は同じだから同じフォントと認識され、当然ながら文字幅の違いによりリフローして文字組みが崩れることになる。実はこれが大問題になっているようだ。
 回避策はモリサワもやっているようだが、この点で冒頭に紹介した上高地仁さんが、「本当は違うフォントなのに、同じフォントとするところに問題がある」という旨のコラムを書いていた。これには思わず「うん!」と手を打った。別のフォントとするのが、たぶん最もリスクの少ない解決策だろう。
 残念ながら、モリサワがこのような手だてを講じるような話はまだ聞いていない。

(記/1998.3.27)


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