[QuarkXPress奮戦記 vol.21]

ポイントか級数か(1)

 QuarkXPressで作業をするようになって以来ずっと、私は文字の単位に級数を使っている。ポイントと級数と、どちらが組版ルールとしてふさわしいかとなると、活字の歴史なども絡んできて私にはなんとも言えない。しかし、どちらがQuarkXPressを扱いやすいかという視点で考えると、私は級数ではないかと思っている。この連載の中のあちこちで触れてはいるが、今回は私なりの「扱いやすさ」について少しまとめてみたいと思う。
 もちろんこれを読んだ人に「級数にしなさい」などと言うつもりは毛頭ない。またこれは、比較的正確な文字組を要求されるテキスト中心の、主として書籍などの組版を対象にしたものとなる。あしからず。

■単位系が統一されるメリット

 級数はまず、計算がしやすい。1級=0.25mmだから、1mm=4級だし、0.1mm=0.4級となる。このあたりの計算が暗算でも可能というのは実に扱いやすいわけだ。
 扱いやすいのは、暗算しやすいからだけではない。日本で使われている用紙の規格はミリだから、文字サイズにポイントを使っていても、ドキュメントの縦横の単位には多くがミリを使用していることだと思う。
 このとき、メジャーパレットがポイントを表示するのは、文字サイズと行送り値だけだ。ドキュメントの縦横、ボックスの縦横はミリで表示される。

 ここに10ポイントの文字を20字入れるテキストボックスを作るとしよう。まず適当にボックスを作った上で、メジャーパレットに「10pt*20」と入力すると、サイズは「70.556mm」となる。ボックスの「テキストとの間隔」が「0」であることが前提だが(以後同じ)、これで文字数はキッチリ収まる。しかし私はまず、この端数が気に入らない。
 また1ポイントは0.352mmとか0.3528mmと言われるが、これは概算計算として使用するならまだしも、組版作業で使用するのはどうかと思う。先の計算をこれでやると、たとえば「3.528*20」と入力すると「70.56mm」となる。ここですでに、QuarkXPressが計算したものとわずかだが誤差が生じている。

 同じことを級数で、たとえば14級の文字を20字入れるテキストボックスを作るとしよう。14級は3.5mmだから同様に「3.5*20」と入力すれば「70mm」となる(0.25*14*20としても同じ)。もちろん文字サイズや文字数によって小数点以下の数値は当然でるが、いずれも0.25mm刻みだからわかりやすい。それに、単位として「pt」と入力する必要もない。そして、ミリを使っていてもメジャーパレットで計算すればキッチリ収まることは、「vol.17 QuarkXPressの単位と計測の怪」で考察した通りだ。
 結局、級数はミリと同じで、メジャーパレットで計算する限り(これが重要!)、ミリと級数の間で誤差が生じることはないわけだ。すると、ドキュメントサイズもボックスのサイズも文字のサイズも、単位系が一つに統一されることになる。私はこの点が、級数を使用する最大のメリットだと思うのだ。

 ここまで書くと、「待て待て。QuarkXPressはポイント(またはインチ)で計算しているから、級数だと誤差が生じるよ。だからポイントの方がいい」とおっしゃる方はおそらく多いだろう。
 実際、先の級数の例をあげると、電卓で計算した上でメジャーパレットに「70mm」と入れた場合は、14級の文字が19字しか入らない。しかし、メジャーパレットでの計算で作った場合との誤差は0.0001mm以下で、この値をプラスすればキッチリ20字収まるようになり、かつボックスのサイズは「70mm」となる。
 これまたvol.17で考察したところだが、こうした級数の場合の誤差は、ポイントなりインチなりに換算されるからではない、と私は思っている。なぜならば、使用する単位がすべて同じ基準でミリという一つの単位に換算されているからだ。
 むしろ私は、ポイントとミリが混在する環境の方が不合理だと思う。それを次に考えてみたい。


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