[QuarkXPress奮戦記 vol.29]

QuarkXPress4.1と「コマンド+リターン」

 昨年7月に公開した「PDF版QuarkXPress奮戦記」はどれくらい読まれているのだろうかと思って最近、ダウンロードファイルのカウントをしてみた。もう1年近くたつのだからほとんど見向きもされていないだろうと思っていたら、今でも日に1〜2本のダウンロードがあるので驚いていた。
 それで、何気なく読み返していたら、大きな問題を発見してしまった。他の場所なら放っておくところだが、文字揃えのサンプルで文字ずれが起こっていたのだから見すごせない。本文中には「これでキッチリ揃う」と書いてあるのに、サンプルを見たら「どこが揃ってるねん」と思われてしまう、みっともない状態だったからだ。

■タテ組みの文字ずれ

 下の左側がそれ。右の正しいものと比べると一目瞭然だが、3行目の行末がボックスをはみ出している。7行目はたまたま「一」という文字だったのではみ出すには至らなかったが、同様のずれが認められる。
 もちろん、当初はこのようなことはなかった。昨年12月に、PDFファイルでフォント埋め込み等をするために、QuarkXPress4.1とNewCIDフォントを使ったが、どうやらそのあたりに原因がありそうだ。

文字揃えがずれたもの。3行目と7行目に注目。

サンプル1
これが揃った文字組み。

サンプル2

■原因は「コマンド+リターン」だった

 フォントをNewCIDからOCFに変えてみたが直らない。ボックスをいじってみても同じだし、スタイルの問題でもないようだ。いろいろ調べた末にわかったのは、「コマンド+リターン(任意改行)」だった。これが3行目の「。酒」の間、7行目の「、成」の間にそれぞれ入っていた。
「コマンド+リターン」はもともと日本語用の機能ではないようだが、行揃えにジャスティファイを適用していてちょうど行末に句読点などがきた場合に、それをボックスの端まで引っ張らず、全角にして隣の行と揃えたい時に重宝する。つまり、その行だけ上(左)揃えにするようなものだ。
 今回の場合は、サンプルに使用したテキストをけっこう使いまわしたので、別のところで「コマンド+リターン」を使って行末調整したものを、そのままもってきていたようだ。
 そこでそれを削除すると、右のサンプルのように正しい姿を取り戻したという次第。

■バージョン間のやりとりに要注意

「コマンド+リターン」が重宝するもう一つの理由は、行末以外では他に影響しないことだった。一度入れたものを放っておいても基本的に問題はない(ただし、約物が連続する中に入れると影響が出る)。だから放っておいたのだが、今回はもともとバージョン3.3で作成したものを、最終的に4.1に移して作業した。ということは、3.3と4.1では同じ「コマンド+リターン」でも扱いが違うのだろうか。それとも変換時の問題なのか。残念ながら詳しいことはわからない。
 実はこの「コマンド+リターン」は、4.0の時点では機能になかった。デモ版が発表された時点で私も確認したし、当時この奮戦記でも書いている(vol.14)。それが4.1から追加されたので喜んでいたところだが、とんだ落とし穴があったようだ。
 なので、「コマンド+リターン」を含むデータを3.3から4.1に移す時は注意が必要だ。もっともこれ、特殊キャラクタを表示してもモニタ上では一見してわからないので、ちょっとやっかいではある。
 なお、最初から4.1で作成するネイティブデータであれば、こうした問題は起こらないと確認できた。
 当然ながら「PDF版QuarkXPress奮戦記」は訂正して第3版をアップした。昨年12月から今年5月までにダウンロードされた方はこのミスを含んでいるので、お詫びするとともに新しいファイルのダウンロードをおすすめしたい。

(記/2001.5.30)

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