[京のお酒エッセー 2006.6]

小国文男
京のお酒エッセー

「英勲」純米大吟醸斗瓶採り(齊藤酒造・伏見)

写真
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【データ】
「英勲」純米大吟醸斗瓶採り
醸造元:齊藤酒造株式会社
製造年月:2006年6月
原材料名:米・米麹
原料米:祝
精米歩合:40%
アルコール分:16度以上17度未満
貯蔵:瓶囲い

 油長さんからメールマガジンが届いた。英勲の「普段は蔵元の秘蔵酒として、イベント会場でのみ販売される限定品を今年度60本に限り当店で販売することが許可され」て、6月と9月に各30本入荷するという。どうも僕はこういうのに弱いようで、そんなレアものなら買わねばなるまい、とさっそく予約してしまった。
 というわけで、先月に続いて今月も同じ蔵になった。

 やってきたその特別限定品の紙箱から出てきたボトルは、ラベルがなくて木札がかけてあった。
 箱には、斗瓶採りの写真入りの解説が入っていた。醪を酒袋に入れ、圧力をかけずにしたたり落ちる酒を18リットルの斗瓶(ガラス瓶)に採り、その上澄みを小瓶に詰めて温水で殺菌し、2度Cの冷蔵庫で保管(瓶囲い)したものだという。

 ボトルに見覚えがあった。「京姫」に似ている。比べてみるとまったく同じものだった。実は面白い形だったので、「京姫」のボトルをとっておいたのだ。
 こういう瓶は蔵ごとのオリジナルなのか、広く共用しているのかなど、よくは知らない。実際、似たような瓶はよくある。ただ、このボトルはかなり個性的だ。
 それだけに、一般市販品でないとはいえ、見ただけで他の銘柄のイメージがわいてしまうのはいかがなものか、という気が少しした。(7/20追記
 唯一の違いは栓で、「英勲」にはコルクが使われていた。手では抜けなかったので、日本酒では初めてソムリエナイフを使った。が、ワインほどの大きさも固さもないので、コルクの方が割れそうになった。

 開けるとほのかに吟醸香がただよう。いつものコップに注ぐと、淡いブロンズといったところ。
 ほんの少しを口に含んでみた。舌先では甘みを感じやすいというが、そう甘くはない。前回紹介した「酒よもやま話」に「人間はトウガラシの辛みを『辛い』と感じ」……、「酒には『甘くない』という感覚しかない」とあったが、なるほどこういうことか、と少し納得できた感じだ。

 実際このお酒、香りは少し甘い感じがするのだが、のどごしは決して甘くなく、ドライ感というかフレッシュ感のような感覚を覚える気がする。
 アテがなくても飲めそうなあたりは僕的には旨口系だが、冷蔵庫をあさると好みの生協のポールウインナーがあったので、出してきた。で、試しにウインナーを食べながらお酒を口に含んでみると、食べたあとで飲むよりも、口当たりものどごしもまろやかに、旨くなった。この飲み方、ちょっとはまるかもしれない。

(記/2006.6.11)

2006/7/20追記
 この瓶は「ミニ斗瓶」と呼ばれるものらしい。本来の斗瓶は1斗、つまり10升、すなわち18リットル入りの、たとえばこんなのらしいが、それを模したミニチュア瓶ということのようだ。そして同じ瓶を使っているものも、こんなのとかこんなのなど、いくつか見つけることができた。
 したがって、この瓶から特定の銘柄をイメージするのは当たらない。失礼しました。


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