[えでぃっとはうすのときど記]

マイクとイヤホン

 しばらくぶりで取材に出かけた。といっても、講演などを中心にして会合の報告冊子を作成するという仕事なので、ようするに録音して写真を撮っていればよく、取材が苦手な僕としてはわりあい気分的に楽な仕事だ。
 10年以上使っている小さなテープレコーダーとスタンドマイク、そしてカメラをもって出かけた。なんとかという携帯用のレコーダーもあるようだが、やっぱり慣れたテープレコーダーが具合がいい。

「あ、イヤホン忘れたワ」
 会場でマイクをセットしていて気がついた。
「えっ? どうすんの」
 いっしょにいた取引先の営業さんが、とたんに不安顔になった。
「いやま、イヤホンなくたって録音できひんわけやないし……」
「そらそやけど、失敗したら他にないで」
 確かに、状態をモニタできないから不安がないわけではない。
「ほな、どっかでイヤホン調達してきてーさ」
「そんなん、どこあんの?」
「そらぁ……、コンビニでもどこでもあるやろ」
「……、しゃあないなあ……」

 ほどなく開会となった。主催者や来賓のあいさつが続く。テープをまわし、とりあえずはあいさつ者の顔写真を撮りに行く。
 しばらくして、営業さんがイヤホンを持って戻ってきた。次の仕事に行く彼女を会釈で見送り、さて録音状態を確認しようとテープレコーダーを見ると、ん? イヤホンジャックが詰まっている。
「ワッ!」
 思わず声を出しそうになった。ジャックに詰まっているのはもちろん物ではなくて、マイクのプラグなのだ。その横でマイクのジャックが「うち、空いてるえ」と笑っている。
「ゲッ!」
 営業さんの不安が的中や。額から汗が噴き出した。

 まあしかし、落ち着いて考えたら内蔵マイクで録音はされているハズ。あとで確認したら、感度に難はあるものの一応入っていたので、ホッと胸をなでおろした。
 たぶん大事には至らないだろうが、それにしても油断禁物だ。

(記:2004/02/13)



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