京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
栓を開けるとこぼれる吟醸香。コップに注ぐと、ごく淡いブロンズの液体には見るからにトロリ感がある。口に含むと思わず「うおっ!」と声が出た。濃い。芳醇。ぶどう? 心地よい甘みが口に広がる。
改めてラベルを見て納得した。米は「祝」だった。その「無ろ過生原酒」だ。祝は少し甘めに出るらしい。それを無理に辛口にするより、米のもち味を活かして仕上げている感じがする。そこに共感できる。
先日、プチ家族旅行で石川県は金沢市を訪ねた。石川のお酒と言えば、僕的には「天狗舞」だ。調べてみると、蔵元は金沢の隣の白山市。残念ながら時間がなくて寄れなかったが、近江町市場の酒屋で山廃純米大吟醸を求めることができた。
「天狗舞」にはいくつか折々の思い出がある。なのでこの際「思い出の酒」というカテゴリを追加してみようと思う。
久しぶりに「蒼空」を飲んだ。このブログでは2010年6月にアップしているからそれ以来、2年近くぶりだ。この間、東北のお酒ばかり飲んでいたから、京都のお酒も久しぶりだった。
数日前に、娘が突然電話してきたのだ。
「いま蒼空の蔵開きに来てて、お酒買って帰ろうと思うんやけど、どれがいい?」
提示されたなかの「山田穂」は飲んだことがなかったから、ならばとそれを頼んだのだった。山田穂は、山田錦の母親にあたる米だという。
ネットで青森のお酒を物色していて、この蔵「桃川」が目に止まった。銘柄に見覚えがあったような気もするが、記憶は定かでない。ただ、今年の仕事で「桃川燕雄(ももかわえんゆう)」という実在した講談師の話を語る故マルセ太郎の立体講談に触れたことで、「桃川」という名前が脳裏に刻まれていたのだと思う。
全国新酒鑑評会で4年連続金賞を受賞している蔵だという。いくつかある銘柄のなかから大吟醸純米「佞武多(ねぶた)」を買ってみた。
米鶴でもおいそしうな活性酒を見つけたので、前回の鶴ラベルとともに買い求めていた。ただ、純米かどうかがサイトではわからなかった。まあ来ればわかるか、と思って買ったのだったが、届いたお酒の原材料を確かめると「醸造アルコール」があったので、実はちょっとがっかりしていた。
そのがっかり感はしかし、実際に飲んでみると、心地よい炭酸味が吹き飛ばしてくれた。
純粋日本酒協会の蔵元紹介に掲載されていた東北の酒蔵は、この米鶴だけだった。その少なさかがちょっと意外だったが、さっそくアクセスしてみた。いわゆる「純米蔵」というわけではないようだが、食指を動かされそうなお酒が並んでいた。そのなかから、JALの機内酒にもなったという純米大吟醸「鶴ラベル」を求めてみた。
南部美人という銘柄名も、もちろん見覚え、耳覚えがある。ただ、これまでに飲んだかどうかとなると、記憶が定かでない。
というか、実はあちこちのお酒はいろいろ飲んだつもりだが、よほど個性的でない限り、それらの記憶はほとんど残っていない。せっかく飲んだのに残念至極だ。
その点、このブログは思い出すのに役に立つ。なので、いい機会だからと取り寄せてみた。
300ml瓶だし、活性酒だし、しかもアルコール度5%とビール並みだし……、というわけであらかじめ予想したが、「すず音(ね)」は10分余りでなくなってしまった。活性酒と見ると目がないものだから、先日の「一ノ蔵」でいっしょに買っていたのだった。
有名な蔵だからだろう、その名前に見覚えがあった。きっとどこかの店で「一ノ蔵を」と頼んだことがあったのだと思う。間違いなく、一度は飲んでいるはずだ。
「蔵の華」というのは、宮城県で独自に育成された酒造好適米なのだという。米づくりから地元ならではのお酒をめざす姿勢には好感がもてる。蔵には農業部門「一ノ蔵農社」もあるらしい。その米を100%使った純米吟醸酒があったので、買い求めてみた。
もちろん静かに入れたのだが、まるでドボドボと注いだビールのように、泡がコップいっぱいに立ちあがった。泡が静まるのを待って注ぎ足す。ビールに比べるとやや粗い泡だが、感覚はまさにビールを注ぐのと同じだった。そう思うとこのビンも、ラッパ飲みが似合いそうなビールビンに見えてくる。
残念ながらその荒々しい様子は写真に撮れなかった。撮っている間にもどんどん静まってきたから、ピークに比べるとずいぶんおとなしい。