京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
改めて購入した油長さんのサイトを見たら「当店の為だけに特別に瓶詰めをした」「しぼりたて生酒」とあって、季節限定200本だという。ずいぶんレアなお酒を手に入れたものだ。そのせいか瓶のあつらえもたいそうで、口には飾り紐までついている。
そんなお酒っていったいどんな味なのだろう、と飲む前からワクワクした。
コップに注ぐと、光線の加減ではやや黄色がかっても見えるが、ほぼ無色できれいに澄んでいる。
香りをかいでみた。お酒の香りって、たぶん酵母の香りなのだろうと思うが、先日の「ささにごり」と似ている。しかし「ささにごり」よりは少し酸っぱそうな感じがする。うーん、なんとか表現したいなあ……。たとえば音階で言えば、「ささにごり」が「ミ」ならこれは「ソ」のような、少し高音という印象だ。
口に含む、飲む。喉に少しの辛みを残してすっと入った。うまい。
ただ正直に言えば、うまいんだけど、僕はやっぱり先日の「ささにごり」の方が好きだ。ようするに活性酒ファンとしては、やや物足りない感じがするわけ。
油長さんによれば、この蔵は「京都産酒造好適米『祝』に最も精通している蔵元」だという。
伏見酒造組合の「伏見の酒豆辞典」をのぞくと、「祝」についての記載があった。昭和初期に誕生した品種だが、何度か栽培されなくなり、1988年頃から復活の動きが始まり、92年に20年ぶりの「祝」の酒が製品化されたのだそうだ。
そういう話を知れば「がんばれー!」とエールを送らずにはいられない。
というのは、あちこちの地酒を飲んでも、原料米は同じ「山田錦」とか「美山錦」「備前雄町」などということがよくあって、僕はずいぶん長い間、酒造好適米とはこの数種類をはじめとする数少ない品種だと思っていたからだ。
が、改めてネットで見たら、なんと100種類以上もあるようだ。ちょっとびっくりした。ひょっとして、このエッセーを書き続けていけば、僕のお酒観はかなり洗われそうな気がする。
【データ】
英勲「古都千年」純米大吟醸原酒(無濾過)
醸造元:齊藤酒造株式会社
製造年月:2004年2月
原材料名:米・米麹
原料米:祝
アルコール分:16度以上17度未満
お酒の甘辛:やや辛
お酒の濃淡:やや濃醇