京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
この夏、仕事仲間といっしょに久し振りに油長さんの利き酒カウンターに座る機会があった。一升瓶で買ったら1万円くらいするお酒も、ここでなら猪口で数百円。この際だからと、実は最初から高いお酒を狙っていた。
利き酒は3種類だ。そのうちの二つに、前から飲みたいと思っていた銘柄を頼んだ。いずれもはやる気持ちを抑えつつ口をつけた。が、期待が大きかったからなのかどうか、思ったよりあっさりしている。なんだか拍子抜けしたような感じだった。
そこで、ちょっと悩んだがもう一つ、エイッとばかりに頼んでみたのが、英勲「井筒屋伊兵衛」の三割五分磨き。つまり表面から65%を削るという磨きに磨いたお米を使ったものだ。
猪口だったが、口元にもってきたときから違った。いい香り。うーん、これ、これを待っていた、という吟醸香。口に含むと、「味がある」とでも言えばいいのか、あっさりではなく、うま〜い。追加してよかった、というお酒だった。
おかげでそれ以来、僕は「井筒屋伊兵衛」の大ファンになってしまった。実は先日も知人と飲みに出た機会があったが、そこにこれがあったので飲んでみた。でも三割五分磨きではなさげな感じ。するとますます夏のひとくちが思い出されてきた。もうあかん……。
で今回、思い切ってそれを買ってしまった。四合瓶なので5,250円。いつもの倍くらいだからかなりぜいたくだが、たまのことなのでと割り切った。お酒は桐箱に入ってやってきた。うひゃ〜。
栓を開ける。少し香りがこぼれ出る。う〜ん、これや。コップに注ぐ。淡く黄みがかっている。改めて香る。これこれ。口に含む。おっと、すぐに喉に落ちた。喉ごしもいい。ん? 後味が心地いい。ほんのりと、キャラメルを食べたあとのような香りがする。こんなのは初めてだ。
瓶のラベルには、日本酒度「約+2.0」とある横にカッコ書きで「濃醇中口」とある。つまり濃いお酒ということなのだろうか。すると僕は「淡麗」より「濃厚」の方が好みなのかもしれない。
今日はコップ2杯でやめようと思う。たぶん1合前後だろう。酔っぱらって味がわからなくなったらもったいない。そう思えるお酒だ。
おかげでこのシリーズ、伏見の全蔵をめぐる前に、英勲は3本目になってしまった。
【データ】
純米大吟醸「井筒屋伊兵衛」三割五分磨き
醸造元:齊藤酒造株式会社
製造年月:2005年9月
原材料名:米・米麹
原料米:祝100%(京都産)
精米歩合:35%
アルコール分:15度以上16度未満
日本酒度:約+2.0
酸度:約1.2
貯蔵:壜囲い