京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
目下いちばんハマッている酒がこれだ。その新酒、しぼりたてが手に入った。
もともとは昨年の夏にいただいたのが発端。以前は「にごり酒」と聞いても単に白濁しているお酒で、どちらかと言えばセレモニー用だと思っていた。けれども、一口飲んで認識が変わった。いわゆる活性酒だったのだ。蔵元は「日本酒のシャンパン」と銘打っているが、さもありなんと思えて、すっかり気に入ってしまった。
このお酒、ビンに「開栓時噴き出し注意」と書いてある。「にごり」が底に沈殿しているので、つい振りたくなるわけだ。しかしゆっくり開栓し、その後にゆっくり振って混ぜるのだという。
栓をゆっくり回した。「プシュ!」とガスが抜ける。すると、ビンの底から気泡が立ち上ってきて、それはまさにシャンパンの泡のようだ。
指示通りゆっくり混ぜたのちコップに注ぐと、これまた気泡が立って、いわば炭酸飲料のごとくになるが、これはすぐに静まる。白濁のせいもあるのだろうがその後、見た目には静かだ。シャンパンのように立ち上る気泡を楽しむことはできない。しかし、コップの上からのぞくと、小さな気泡がわき出していのがわかる。
見た目には、牛乳ほど白くない。どちらかと言えば「カルピス」だ。
香りをかいでみる。先の「ささにごり」や「古都千年」とは明らかに違う。というか、それらほど香りを感じない。いや、確かに香りはあるが、どう表現していいものやら……。
口に含むとそれは「♪さわやかサワー」という感じなのだ。ハッキリ言ってこれはよくない。実によくない。なぜって、ついつい飲んでしまうから。
実を言うと、初めて飲んだのは小さなビンだったが、純米タイプの4合瓶を買うようになって、飲んでいる時の気分の良さと翌日の気分とのギャップに気がついた。アルコール度数も通常の日本酒より少し高い17度だ。飲みやすいからと飲み過ぎると、まわってしまう感じだ。要注意。
僕はこの酒がとても気に入ってしまったので、去年の秋以降、機会があれば「月の桂のにごり酒はうまい」と言うようになっていた。すると「もっとうまいにごり酒がある」と言われた。実際にその酒も味わうことができた。銘柄を失念してしまったのが悔やまれるが、その酒は見た目にも牛乳のように白い。飲めば活性酒でしかも濃厚、確かにうまかった。
しかしまあ、このあたりは好みの問題のような気もする。ここでは地元の人に地元のお酒を紹介したいので、このお酒を推したいと思う。
【データ】
「月の桂にごり酒」純米吟醸酒
醸造元:株式会社増田徳兵衛商店
製造年月:2004年2月
原材料名:米・米麹
原料米:祝
精米歩合:50%
アルコール分:17度