京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
銘柄名「把和游(はわゆう)」は「How are you?」の当て字らしい。好みの問題だが、僕はこういうネーミングがあまり趣味ではない。おかげで見過ごしていた。
このお酒、油長さんのサイトでよく見ると「山田錦35%精米で純米酒はめずらしい。うるさ方には是非」とある。「うるさ方」ではないが食指が動いた。
しかも手元に届いてラベルを見ると「滴酒」「斗瓶囲い」とある。あれま、こいつはすごい。ようするに、袋からしたたり落ちる滴だけを一斗瓶に集めて蔵で貯蔵されていたものだ。
つまりこれは、僕が銘柄名から受けた軽い印象とは裏腹に、かなり重厚なお酒だ。つや消し処理がしてある深い緑色の瓶に和紙のラベルなども、十分にそれを物語る。
ちなみに、紫外線を遮って中のお酒を変質させないために効果的な瓶の色は、茶色と緑らしい。
栓を開けてコップに注ぐ。少し黄味がかっているのがわかる。香ればうーん、1か月ぶりの吟醸香。香りはやや甘酸っぱい感じで口に含むと柔らかいが、これは明らかに辛口だ。蔵元サイトの表示は日本酒度「+3」だったが、油長さんでは「+5」と表示されていた。「+5」の方が納得できる感じだ。
油長さんの言う「めずらしい」とはおそらく、35%も磨けば甘みが濃厚になって醸造用アルコールの添加で味を調整するケースが多いが、純米のままとはめずらしい、という意味だと思われる。つまり調整する必要がなかったということだろう。
実は飲む前、瓶裏のラベルの解説に辛口とあったのを、少し疑っていた。ここ2年間伏見のお酒を飲み続けてきたから、辛口といえども、最初は多少甘みを感じるだろうと思っていたわけ。しかしこれは、最初から辛かった。しかし単純に辛いだけではない。味がある、とでも言えばいいのだろうか、そんな感じがする。
それと、なんだか焼酎でも飲んだ時のように、口の中がカーッとする。純米大吟醸ではこれまであまりなかった感覚だ。ここ数日、酒類を飲まなかったからかもしれない。
辛口ならばアテがほしい。冷蔵庫にあったベビーチーズはちょっと合わなかった。今夜は生協のポールウインナーの方が相性がいい感じだ。
コップに3杯、もうまわってきた。けっこう重い気がする……。
【データ】
純米大吟醸滴酒斗瓶囲い「把和游」
醸造元:株式会社増田徳兵衛商店
製造年月:2006年2月
原材料名:米・米麹
材料米:山田錦
精米歩合:35%
アルコール分:17度
日本酒度:+3