京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
失礼なことに、招徳酒造が純米酒だけを醸す蔵元だということを知らなかった。Webサイトを見て認識を改めた。しかも「純粋日本酒協会」の発足メンバーだという。
同協会のサイトを見ると、京都では玉の光酒造と松本酒造も会員に名を連ねている。全国で18蔵らしいのが少しさびしいが、こういう蔵元がもっと増えてほしいと思う。
そこで招徳の純米大吟醸「延寿万年」を、蔵元直送で求めてみた。
解説書によれば「摂氏十二度位が最高の味わい」とある。数字で示していただくのは親切なのだろうとは思うが、飲むのにいちいち温度を計る習慣はないから困ってしまった。
まずは、冷やしすぎないというあたりかなと勝手に解釈して、3時間ほど冷やしたところで栓を開けた。ほのかな香りがこぼれ出た。穏やかな香りだ。少し熟成感があるように思えた。
実は以前、香りで悩んだ「蔵纏」は、熟成期間が長い影響もあるのではないか、と油長さんで教えていただいた。それほど強くはないが、似た部分があるように感じた。
口に含んだ印象は、あっさりしている。日本酒度等の表示はないが、辛口だと思う。ただなんとなく、味気ない気がした。
蔵元サイトには「お酒に合う料理」が紹介してあって、それは「モッツァレラチーズとトマトのサラダ、お造り、ごま豆腐」なのだという。確かにアテはほしくなる。冷蔵庫を見たら「とろけるチーズ」しかなかったので出してきたが、これはちょっとミスマッチだったみたい。
所用もあったので丸2日、冷蔵庫に置いていた。そのキュッと冷えたお酒をコップに注ぐと、淡いけれども確かに吟醸香。飲んだ印象としても、旨みが増した感じがする。いつもの生協のボールウインナーとは、食べながら飲んでも相性がよかった。しかもスッキリ感がある。
お酒には、使用する酵母などの違いにより美味しいと感じる温度にも違いが出ると教えていただいたのはキンシ正宗の取材の折だったが、どうやらこれは、しっかり冷やすのが美味しいお酒のようだ。
【データ】
純米大吟醸「延寿万年」
醸造元:招徳酒造株式会社
製造年月:2006年7月
原材料名:米・米麹
原料米:山田錦
精米歩合:40%
アルコール分:16度以上17度未満