京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
先月、玉乃光が純米蔵だと改めて認識したので、今回は同蔵の、有機肥料栽培の備前雄町を使った純米大吟醸を求めてみた。
やってきたお酒には、解説の中に「化学(無機)肥料は一切使用しないで全量有機質肥料によって栽培されたことを証明します」という、4名の生産者名が入った、岡山市農協による証明書が印刷されていた。「無農薬」というのはよく出合うが、100%有機肥料というのはあまり知らない。
その解説によると、化学肥料だけで作った酒米に比べてたんぱく質が少ないので、味が鈍重にならず、より華麗な酒質が特徴だという。「華麗」といってもよくわからないが、瓶のラベルには「コクのある辛口」とある。「コク」はちょっと楽しみだ。
ただこの証明書、証明日が「平成15年12月12日」とある。米の収穫と酒の製造サイクルの関係をいまひとつよく知らないが、普通に考えれば、15年収穫の米は16年の寒いうちに醸されのだろう。普通はひと夏越して秋に流通しはじめるそうで、その出はじめに加熱殺菌せずに出荷するものを特に「ひやおろし」と呼ぶらしい。
だから流通が17年でも不思議はないが、今年は18年だ。ということは、1年くらいの熟成を経て出荷されているのだろうか。いやそれとも、単に証明書の在庫が残っているからだろうか。
いずれにせよ、飲む前からいろいろと想像させてくれるお酒だ。
さて開栓。香りは穏やか、色はごくほんのり黄みがかる。
このお酒、舌の上に味が残る気がする。つまり、お酒を飲み下したあとでも口の中が美味しいわけ。美味しいご飯を噛みしめて味わう米の旨みとでもいったらいいだろうか。
そう思ってもう一度瓶のラベルを見ると、「酸」も「糖」も強いらしい。「本当の辛口(ドライ)は酸により決まります」と書いてある。ちなみに端麗辛口は「酸」が強くて「糖」が弱いのだという。つまり「糖」が旨みで「コク」をつくっているということのようだ。
さらに、いつもの生協のポールウインナーに合わせてみた。ウインナーをかじって、そのまま酒を口に含む。うん、合う。どちらもより旨くなる感じ。うひゃー、こりゃどんどん進みそうな予感……。
【データ】
純米大吟醸「玉乃光」有機肥料使用雄町100%
醸造元:玉乃光酒造株式会社
製造年月:2006年8月
原材料名:米・米麹
原料米:有機栽培の備前雄町100%
精米歩合:45%
アルコール分:16度以上17度未満
日本酒度:+4.0
酸度:1.6
アミノ酸度:1.2