京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
ハクレイ酒造は京都府北部、宮津市の由良にある蔵。ここも新酒鑑評会の入賞酒一覧を見ていて気になった蔵だ。蔵元サイトを見れば、すでに2001年から金賞受賞歴があるようだ。
で、どうせなら金賞酒をと思ったが、35%精米の大吟醸は純米でない。同銘柄で50%精米の純米大吟醸があったが、ネットでは一升瓶しか買えない模様。そんなにはいらん……。すると四合瓶のある特別純米酒の能書きに目が止まった。曰く──。
「栽培からこだわった良いお米を使うとそんなにお米を磨かなくても美味しいお酒を造ることができます。(中略)吟醸酒・大吟醸酒に決して劣ることの無いお酒通の方をも唸らせる美味しさとお求めやすいリーズナブルな価格との両立を実現した純米酒なのです」
ならば試してみよう、というわけで買ったのがこの特別純米酒「香田」という次第。
確かにこの蔵、酒米には並々ならぬ力を入れているようで、10年近く前、丹後で初めて自前で山田錦を作ったという。名づけて「丹後山田錦」。届いた瓶裏のラベルには、その米の契約栽培者の名前が6人並んでいる。杜氏の名前のあるラベルはよくあるが、こういうのを僕は初めて見た。
さて開栓。ん? きれいなブルーの瓶から淡い香りが漂う。コップに注ぐと少しトロリとした感じがする。口に含むとやわらかい口当たりだ。日本酒度±0を味わうのは京姫以来だが、全体としては甘口系のお酒だと思う。ただ酸度が高いせいか飽きがこず、うま味のある酒のように思える。
そして確かに、大部分が70%精米とは思えない。感覚的には50%くらいには匹敵するだろうか。そして吟醸造りではないはずだが、吟醸香にも似た香り。驚いた。なるほどその意味では「吟醸酒・大吟醸酒に決して劣ることの無い」ものだと思う。
もう一つ驚いたのは、僕としては辛口でもないのになんとなくアテを欲すること。たまたまあったスルメ(いか燻製)と合わせてみると、これがなかなかいける。スルメを口に含みながら飲むと、スルメが酒に少し辛みを与え、酒がスルメをマイルドにするような感じ。
そのせいか、なんだか杯が進む。おや……、心なしか喉ごしが辛くなってきたようにも思える。
ところで、ここの通販サイトには「お味にご満足頂けなかった場合、飲みかけ・食べかけでもご連絡下さい。よろこんで返品をお受け致します」と書いてある。自信なのか、謙虚なのか、それとも賭けなのか……。幸い、返品の必要はない。安くて旨い、いい買い物だった。
【データ】
特別純米酒「香田」
醸造元:ハクレイ酒造株式会社
製造年月:2008年9月
原材料名:米・米麹
原料米:丹後山田錦100%
精米歩合:酒母・麹米60%、掛米70%
アルコール分:14度以上15度未満
日本酒度:±0
酸度:2.0