京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
しばらくぶりに油長さんの通販サイトをのぞくと、「初夏のお勧め 時期限定酒」というキャッチでこの「生詰」が目に止まった。「生詰」というのはこの場合、瓶詰めの際の火入れ(熱処理)をしていないお酒のことだ。「英勲」の純米大吟醸で1,680円はお手頃と思えた。
やってきた「生詰」はブルーの瓶に密閉栓がついていた。開けるとき、小さくプシュッとガスが抜ける音がする。いわゆる活性酒ではないと思うが、多少の二次発酵があるのだろうか。いつもの注ぎ口ははまらない。
いつものコップに注ぐと、わずかに泡がたつ。これまであまり気にしなかったが、わずかに含まれる炭酸ガスのせいなのかもしれない、と思えた。
香りは控えめだが、久しぶりの吟醸香が鼻腔をくすぐる。
口に含んで、空気とともにズズーッと吸い込んでみる。リンゴ? ぶとう? やっぱりぶどうかな……、という感じの香りと味だ。飲み下すと、トロリと喉に落ちた。
このあたりの繊細な感覚は、まだ素面だからこそ。酔ってからでは味わえないだろうと思う。
だから、旨いお酒は素面で飲むべし、と思う。
旨いお酒は、飲み始めの口当たりがやや甘く感じることが少なくない。フルーティな香りから感じる自然な甘味は、心地よい旨みにつながると思う。
ところが酔ってしまってから飲むと、すでに口も辛く、自然な甘味も単に「甘っ!」という嫌悪感と化してしまう。これはもったいない飲み方だと思うわけ。
だから、普段はビールから飲み始める僕も、旨いお酒が手に入れば、迷わずそれを最初に飲むことにしている。
さて、あっという間にコップ4杯目。アテがほしくなってきた。つまり辛くなってきたわけ。ちょっと重くも感じる。冷蔵庫を物色してチーズを発見。チーズを食べながら飲むと、互いにマイルドになる感じで、相性がいい。また少し進んでしまった。
今夜は少し、飲み過ぎたかもしれない。
【データ】
「英勲・生詰」純米大吟醸
醸造元:齊藤酒造株式会社
製造年月:2009年5月
原材料名:米・米麹
精米歩合:50%
アルコール分:15度以上16度未満