京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
「微炭酸なんです」という声に、思わず振り向いた。「あ、活性酒なんですか?」「はい」……。
機会があって訪ねた木下酒造の蔵元売店でのこと。いっしょだった娘が冷蔵ケースを見て「無濾過生原酒と手つけず原酒はどう違うん?」と聞くので、「店の人に聞いてんか」と言った直後のことだった。
そうと聞けば食指が動く。実は頼まれておみやげを買いに来たのだったが、自分用にこの「手つけず原酒」も買ってしまった。
「手つけず原酒」というのは、かねてより飲みたかったお酒でもある。この蔵のサイトに「和く輪く倶楽部」があり、ネット限定で「和く輪く・手つけず原酒」を販売していたのだ。
先日買おうとしたら、すでに完売していてがっかりしたところだったので、店頭で見つけた「手つけず原酒」に、心密かに興奮したのだった。
もっとも聞いてみたら、ネット限定品とは別物らしい。「和く輪く」は米が日本晴、店頭販売は雄町だという。たまたま正月に飲んだ雄町の純米吟醸がなかなか旨かったが、その原酒だろうか。ちょっと期待が膨らんだ。
さあ開栓。いつものコップに注いで撮影中も、吟醸香が香る。色はやや黄みがかっている。
最初ちょっと濁って見えたので、明かりにかざしてみた。細かい気泡だ。コップいっぱい、無数に漂っている。シャンパンのように細く立ち上る泡ではない。見ていると、泡は下から上へと次第に姿を消していく。初めて見るパターンだ。
口に含んだ。吟醸香ゆえかリンゴのようなやや甘い印象。しかし、口当たりはさっぱり感があって、ラムネかサイダーのようなスッキリとした炭酸味が漂う。期待した活性酒ほどではないが、なるほど「微炭酸」とは的確な表現のような気がする。
精米歩合60%とは思えないほど芳醇でもある。アルコール度数が高いのも「手つけず」を物語っているようだ。
飲むほどに嗅覚がマヒしてくると、感覚的にも辛口になっていく。日本酒度の表示はないが、3〜4くらいではないかと予想。オニオンスライスとも、いかなごのくぎ煮とも、相性はなかなかよい。
ちょっと、くせになりそうなお酒だ。四合瓶で1,800円。高くないと思う。
【データ】
純米吟醸「玉川」手つけず原酒
醸造元:木下酒造有限会社
製造年月:2010年3月
原材料名:米・米麹
原料米:雄町(岡山県産)100%
精米歩合:60%
アルコール分:18度以上19度未満