京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
一般に、何か話題の題材を銘柄に使ったお酒はあまり好まない。その話題に乗じて売れてほしいという希望なのだろうが、そのお酒の成り立ちとは何の関係もないからだ。もちろん、銘柄が必ずしもそのお酒を表現しているとは限らないが、定着すればそれはそれでそのお酒の顔にはなるだろう。
というわけで今回の「京の弁慶」も、弁慶にちなんだお酒の類というのが第一印象だった。ところが、油長さんのネットショップの解説を読むと、「辨慶」という幻の酒米を使ったお酒だという。しかも限定2,500本。それも玉乃光の純米大吟醸で1,575円ときたら、もう買わずにはいられなかった。
少し前の飲んだ「愛山」といい、このところ「幻」とつく酒米が人気なんだろうか。この「辨慶」も兵庫県産で、瓶の裏に貼られたラベルによれば、ごく少数の篤農家が栽培しているだけの、名実ともに貴重な酒米らしい。
「ひと仕込みのみ」とかで、蔵のサイトにも解説は見あたらないようだ。ネット検索すると、こんな記事がヒットした。
さて、開栓してみた。それほど香りプンプンということはない。コップに注ぎ、白い紙を透かして見ると、色はやや黄みがかっているのが確認できる。鼻を近づければ、しばらくぶりの吟醸香に、つい「うーん、フルーティ」と口にしそうになる。たぶん酵母の香りなんだろうけど……。
口に含んでみる。トロリとした印象。ズズーッと空気を吸い込んでみる。うーん、いつもながらよくわからん……。ゴクリと飲んでみる。少しカッとする。
日本酒度などの表示はない。最初はアテいらずの印象だったが、次第に何かほしくなってきた。どうやらいつもの生協ポールウインナーがいいのではないか。たまたま冷蔵庫にあったので出してきて、食べながら飲んでみた。やっぱりベストマッチだ。
しかもこれ、飲んでいる間は互いにマイルドになる感じだが、後口に辛口感というか、さっぱり感のような印象が残る。なんだかおもしろい。
酔ってしまえば同じだし、幻の酒米でつくった貴重なお酒を飲んでいるという感覚はあまりなかったが、このところ焼酎ばかり飲んでいたから、しばらくぶりの日本酒は旨かった。
【データ】
純米大吟醸「京の弁慶」
醸造元:玉の光酒造株式会社
製造年月:2010年8月
原材料名:米・米麹
原料米:辨慶100%(兵庫県産)
精米歩合:50%
アルコール分:16度以上17度未満