京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
前回「何か話題の題材を銘柄に使ったお酒はあまり好まない」なんて書いておきながら、まさにクライマックスを迎えている大河ドラマで話題の銘柄を買ってしまった。はは、はははは……。
実はこの蔵、その手のネーミングが多いほうだと思う。でもこの蔵のお酒は好きだ。特に「にごり酒」シリーズは大好きだ。これは従来のシリーズに比べてアルコール度数が15度と、2度だけライトなタイプ。「もちろん、発泡感が損なわれることなく、さわやかな飲み心地」と、油長さんのネットショップで紹介されていた。
なので、この際ネーミングはどうでもよくて、久しぶりに月の桂のにごり酒、それもさわやかなのを飲みたくなって買ってみた。1,838円も魅力的だった。
このお酒の開栓には特に注意が必要だ。無造作にあけると吹き出すからだ。
まず栓を少しねじる。プシュッと音がして泡がわき上がってきた。すぐに栓を閉じる。泡は次第に収まっていく。また少し栓をねじる。泡がわきたつ。沈んでいたオリが瓶のなかで踊る。また栓を閉じる。
こんなことを数分くり返して、少しずつ炭酸ガスを抜く。この蔵のにごり酒は何度か飲んだが、こんなのは初めてだった。
ようやくガスが収まってきたと思えたころ、いつもの注ぎ口を装着。やれやれ……と思ったらこの注ぎ口、外からの空気はシャットアウトするが、中から注ぐ分には抵抗がない。見ているうちに、ガスの勢いで口からお酒が溢れてきた。あわててコップを取って注ぐ。でも少し、床にまでこぼしてしまった。ああ、もったいない……。
あとで落ち着いて考えれば、注ぎ口を指などで塞いでやればよかったのだ。プチパニックのために考えが至らなかった。
乳濁食に濁っているから横から見てもわからないが、コップの上からのぞくと、細かい泡がモリモリと上がってきているのが見える。泡は表面でプチプチと弾けている。瓶の中でも、お酒の表面がプチプチとわき立っている。酒蔵見学で見せてもらった仕込みタンクのモロミの様子のようだ。
このにごり酒は、モロミを特殊な方法で濾して瓶詰めしたものだそうだ。だから酵母が生きていて、発酵を続けているのだという。その意味では、モロミの様子を彷彿とさせるのは不思議ではない。
このお酒、いわゆる「ヤバイ」酒だ。炭酸味の爽快感があるから、ついついゴクリと飲んでしまいたくなる。実際、ちびちび飲むよりある程度の量をゴクリとやった方が爽快だ。当たり前だが飲む量が増える。すると酔いが回る。だからヤバイ。
と言っている間に3/4ほどなくなってしまった。今夜はこれくらいでお開きにしようと思う。龍馬を引き合いに出さなくても、飲めば好きになりそうなお酒だと思うけどなあ……。
【データ】
月の桂スパークリング純米にごり酒「龍馬に恋して」
醸造元:株式会社増田徳兵衛商店
製造年月:2010年9月
原材料名:米・米麹
精米歩合:55%
アルコール分:15度