京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
地元のお酒を地元で飲むのが一番旨いからとここ数年、京都のお酒ばかりを飲んできた。しかし東日本大震災に直面したいま、そのお酒を飲むことが復興に多少なりとも役立つのであれば、喜んで東北のお酒を飲もうと思う。
ネットで酒蔵を検索してみた。「東北の日本酒を飲む会」なるサイトがあった。さすがに東京までは足を運べないが、その出展蔵名簿を見ていてまず気になったのが、この「蔵粋(くらしっく)」だった。
モロミにモーツァルトを聴かせているのだという。すると酵母の増殖が活発になり、フルーツ香の強いお酒になるという。さらには酵母の死滅率も低くなって、雑味の少ないお酒になるのだという。
ぶっちゃけた話、ホンマかいな、と思う。が、音楽を聴かせる効果というのは、ようするに音波、空気の振動がタンク内のモロミ、あるいは酵母などの菌類に与える影響ということだろうと考えた。それはあるかもしれない、とも思う。いずれにせよ、どんなお酒なのだろうと期待するには余りある。
ネットで注文した2日後に届いた。何のコメントも書かずに注文したが、届いたお酒には「大変な時ですが努力して参りますので今後共よろしくお願い致します」と添え書きがあった。
開栓すると「うーん、しばらく」といった感じの吟醸香がこぼれ出る。さっそく口に運ぶ。ぶどう? そんな香りが鼻をくすぐる。ぶどうなら巨峰かな? いい香りだ。ごくりと飲んでみる。喉ごしに味がある。日本酒度の表示はないが、3くらいだろうか。
しばらく飲んで口当たりが辛くなってくるかなと思ったが、それほどでもない。最初の柔らかい感じをキープしている印象だ。
ふと思い立って、もらいものの大根の漬物を出してきた。やや辛口なのでどうかなと思ったが、これがベストマッチ。さらに飲みたく、そして食べたくなってきた。もしかしたら甘口かな思えた酒が辛口のアテと合うというのは、ちょっと不思議な感覚だ。
ただ、確かにフルーティだし美味なのだけれども、それが明らかにモーツァルトの影響か、となるとよくわからない。同じように旨いお酒も少なくないと思えてしまうからだ。ソムリエさんならわかるのだろうな、と思うとうらやましい気もする。
まあそれはそれとして、面白い蔵だと思う。実はもう1本、活性酒も買ったので、次はそれを楽しもうと思っている。
【データ】
純米大吟醸 管弦楽「蔵粋」
醸造元:小原酒造株式会社(福島県喜多方市)
製造年月:2011年4月
原材料名:米・米麹
精米歩合:40%
アルコール分:15度