京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
「蒼空(そうくう)」というのは初めて飲む銘柄だった。このページのために蔵元のサイトを探そうと伏見酒造組合のサイトを見ても、蔵元リンクには含まれていなかった。えっ? なんで……?
そこでWeb検索で情報を探ってみると、次のようなことがわかった。
9月の初めに油長さんから届いたメールマガジンに、「ひやおろし」の紹介があった。
なんでも通常日本酒は、醸造後に加熱殺菌されて夏を越し、出荷前にもう一度加熱されてから市場に出るのだという。これは品質を安定させるためだそうだ。
「斗瓶」(とびん)とは読んで字のごとく1斗、つまり10升(180リットル)入る瓶のことらしい。これ自体はただの瓶だが、これが「斗瓶取り」(「斗瓶採り」「斗壜採り」とも)とか「斗瓶囲い」とか言われると、とたんにそれは手間暇かけた特別な酒の代名詞になるという。
目下いちばんハマッている酒がこれだ。その新酒、しぼりたてが手に入った。
もともとは昨年の夏にいただいたのが発端。以前は「にごり酒」と聞いても単に白濁しているお酒で、どちらかと言えばセレモニー用だと思っていた。けれども、一口飲んで認識が変わった。いわゆる活性酒だったのだ。蔵元は「日本酒のシャンパン」と銘打っているが、さもありなんと思えて、すっかり気に入ってしまった。
改めて購入した油長さんのサイトを見たら「当店の為だけに特別に瓶詰めをした」「しぼりたて生酒」とあって、季節限定200本だという。ずいぶんレアなお酒を手に入れたものだ。そのせいか瓶のあつらえもたいそうで、口には飾り紐までついている。
そんなお酒っていったいどんな味なのだろう、と飲む前からワクワクした。
若い頃、心の底から「うまい」と思って酒を飲んだことはなかった。なのになぜ飲んでいたのか。ひとことで言えばそれは「ミエ」にほかならない。酒が飲める、酒に強いということが、一人前の条件のように思えたからだった。