2001年6月11日(月) 天気 : 晴れ

ある写真展で

取材に出かけた帰り、知り合いのカメラマンの写真展をのぞいてきた。

障害をもつ人たちの「20歳」を撮った、すべてモノクロの写真。去年の夏に企画して、1年かけて撮影してきたという。
それぞれ約1メートル四方の写真が17点、継ぎ目なしの長い印画紙にプリントされている。
「えー、これ1枚なん?」
それと知った来場者から驚きの声があがる。これが2枚なので写真は34点。細長いギャラリーの壁をぐるりと巻いて、細長い帯になっていた。
「目が輝いてるねえ」
あちこちからそんな声が聞こえてきた。

「明日が嫁さんの命日なんや」
カメラマンの彼が話している。
「そやからまあ、これがオレの供養かなあ。がんばってるで、って」

そうだった。
奥さんがガンで亡くなってから、もう1年なのだ。まだ40代後半にさしかかったところだった。
「ごめんな、ごめんな」
亡くなる間際、奥さんはしきりにそう言ったと聞く。

「だから、これからは他の女に乗り換えるで、っちゅうことやねん」
彼はおどけた。照れ隠しとも本音ともとれるのが彼らしい。
「何言ってんの、この前フラれたくせに」
「あ、何で知ってんの!?」
話の輪がはじけた。

いい一周忌だ、と思った。