みそ汁
酔い覚めのみそ汁がなんて美味しいのだろう、と気がついたのは、もうずいぶん前のことだ。
心地よい香りを味わいながら一杯のみそ汁を飲み下すと、さながら乾いた砂に水がしみ入るように体中に心地よさが広がっていき、なんだか体が楽になるようにさえ思える。
味噌の中にアルコールを分解する成分でもあるのだろうか、と思って数年前、味噌屋さんの取材の折に聞いてみたことがある。
「私、酔い覚めのみそ汁がとても美味しいんですけど、あれはなぜなんでしょう」
いっしょにいたカメラマン氏も「うんうん」と興味深げだ。
年配のご主人はニコニコ笑って答えてくださった。
「ほんまに、うまいねえ……」
なんだか感慨深げだ。やっぱりそうですよねえ、と僕はうなづきながら次の言葉を待った。
「……」
えっ、それだけ? そんな……。肝心なことは? ねえご主人……、と心の中で叫んではいたが、僕は同じ質問を繰り返せなかった。
というわけで、いまだになぜなのかはわからないが、とにかく二日酔いにはみそ汁がうまい。
で、僕の体は今日も一日みそ汁を欲する状態だったので、コンビニに出かけてインスタントのみそ汁を買ってきた。それだけでなく、夕飯のみそ汁もまた格別だった。
似たような話を以前にもここに書いたような気がするな……。