歌の中山
三軒ハシゴした取材で、最後は清閑寺の近くだった。
「この近所で以前、『歌の中山碑』の写真を撮ってくる仕事がありまして……」(
ひとりごと99.10.29「小さな三面記事」参照)
「ああ、山の中にありますよね」
「えっ? 入り口の『歌の中山 清閑寺』っていう石碑じゃなくて?」
「ええ、10分ほど登ったら立ってますよ」
「私その時、山の中もずいぶん探したんですけどわからなくて……。やっぱりあるんですか……」
「その時、ちょっと寄ってくれはったらよかったのに」
「ほんまですね……」
ちょうど3年前の仕事だった。結局その時は、入り口の石碑の写真が使われた。でもなんだか気になって、その碑はずっと、僕の頭の隅で幻だったような気がする。
せっかくなので、取材が終わってから登ってみた。最初は折れるべき道を行き過ぎてしまい、半分諦め気分で戻ってくる途中で発見した。
これが「歌の中山碑」か……。
それは、街道の常夜燈のような大きくて立派な石碑だった。文字が風化して薄くなり、ハッキリとは確認できかったけれども、山の中にあってほかには石碑の類はないから、きっとこれなのだと思う。
当然ながらもう訂正などできないが、3年目にしてようやく出合った碑に向かい、僕は何枚もシャッターを切った。
ノースモーキング6日間。