9月の初めに油長さんから届いたメールマガジンに、「ひやおろし」の紹介があった。
なんでも通常日本酒は、醸造後に加熱殺菌されて夏を越し、出荷前にもう一度加熱されてから市場に出るのだという。これは品質を安定させるためだそうだ。
ところがこの出荷前の加熱をせずに冷やのまま出荷用の木樽に移したものを「ひやおろし」と呼ぶのだという。お酒が気温と同じくらいになった頃に出荷されるので、この季節だけのお酒らしい。「ひと夏寝かされる為、新酒の荒々しさが消えて、熟成された丸みのある酒質」になるのだという。
こんなのを読むとすぐに飲みたくなるところだが、諸般の事情でようやく先日注文し、このほど口にすることができた。しかし残念ながら旬からは少しずれてしまったようだ。
今回求めたのは招徳の純米大吟醸「月遊び」。いかにも9月の酒というネーミングで、実際にも季節限定商品らしい。ラベルに月のうさぎのイラストが施され、同じデザインのグラスが2個ついている、なかなかおしゃれなものだった。
いつものグラスに注いでみる。まだ室温が高いのですぐに水滴がつく。色はやや黄みがかって、無色ではない。香りプンプンというほどではないが、口に近づけると吟醸香が漂う。口に含んだ第一印象は「やわらかい」。同時に少し甘みが漂う。
一般に純米大吟醸というと、旨さと裏腹に少しまったりとして食前酒的な印象もあるが、この酒はなんだか「飲める酒」という感じがした。日本酒度「+3」というのはやや辛口ということだと思うが、なるほど飲むにつれて最初に感じた少しの甘みは次第になくなり、心地よい辛みになっていく。久しぶりに旨い日本酒を飲んだこともあって、つい杯を重ねてしまった。
なお、蔵元のWebページによれば、わが家からも比較的近い越畑という地域で契約栽培の酒米を作るなど、いろいろと新しい試みをしているらしい。そんな努力の結実として「越畑」という酒もできたという。次は一度飲んでみたいと思う。
と、ここまで書いてふと疑問。この「月遊び」は本当に「ひやおろし」なのか。とりあえず油長さんのメルマガにあったので買ったのだが、瓶のどこにも特に「ひやおろし」の記述はない。唯一それを示すとすれば、製造年月(ようするに出荷日のことだと思うが)が9月となっていることだけだ。
そんなふうにヒヤヒヤしながら飲むのがホンマの「ひやおろし」なんやろか……。
(記/2004.10.5)
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