「坤滴」は「こんてき」と読む。箱に書かれた解説によると「坤」は「大地」の意だという。つまり「大地の滴」ということになる。箱にも瓶にも「平成十六年全国新酒鑑評会金賞受賞酒」と書いたラベルが貼ってある。たぶんこれのことだと思う。
蔵元は小さな蔵だという。先日飲み会で出会った人から聞いたところによると、黄桜の子会社らしい。北川本家のサイト内にある伏見酒造組合員名簿によれば、なるほど東山酒造の銘柄欄には「黄桜」とあるから、その通りなのだろう。失礼ながらこういうマイナーな蔵の酒、僕は大好きだ。
手元には「坤滴」の大吟醸がある。やや残念なのはこれが純米でないことだ。
実は先の飲み会で「坤滴」が話題になったとき、数日前に油長さんで見つけたことを思い出した。しかし名称に「純米」となかった。
「あれって、純米じゃないですよね」
「そんなことないですよ。純米ですよ」
「あ、そうなんですか。じゃあ今度、試してみます」
そんなわけでさっそく注文したのだが、やってきた「大吟醸」にはやっぱり醸造アルコールが含まれていた。もっともネットで検索してみると、「坤滴」には純米酒や特別純米酒が確かにあることが確認できたから、かの御仁がウソを言っていたわけではない。
しかも、吟醸酒や大吟醸酒に使われる醸造アルコールは少量で、口当たりをよくするのが目的だと、伏見酒造組合のサイトでも解説されている(伏見の酒豆辞典)。
実際、コップに注いで口元にもってくると、芳醇な香りが心地よい。少し酸味がするというのか、甘酸っぱいような印象もある。口に含むと柔らかい。そしてあっさり感が印象に残った。
純米で大吟醸だとけっこうまったり感がある。だからたぶんこのあっさり感が、醸造アルコールの効果なのではないかと思われた。
とはいえそれは、あらかじめ原材料を見ているから想像できるわけで、仮に「純米ですよ」と言われても、何も疑うことなく飲んでいただろうと思う。
自分としては、米と米麹だけのお酒にこだわっているのだが、かといってわずかな醸造アルコールを判別できるほど舌が肥えているわけではない。
けれどもいつか、純米大吟醸の「坤滴」を飲んでみたいと思う。
(記/2004.11.26)
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