期待しすぎてがっかりすることもあれば、期待しなかった故に好印象というケースもある。
今回の「名聲」は、申し訳ないけれども、ちっとも期待しなかった。いわゆる普通酒だけで、純米酒などは醸してないという。それでも全蔵を巡るのだ、と思って買ったのだった。
蔵に関する情報は、伏見酒造組合の蔵元紹介くらいしか見あたらない模様だ。和歌山から戦後になって伏見にやってきた酒蔵らしい。
お酒に関する情報も少ない。瓶のラベルにも基本的な事項しかなかった。
気になったのは、ラベルの「名聲」の左下に朱印のような「吟醸」とある文字。吟醸酒なのだろうか。しかしそれを裏付けるデータはない。精米歩合の表示がなければ特定名称酒としての「吟醸」ではないから、醸造アルコールが白米重量の10%以下という制限はない。
上の楕円のラベルに「上撰」とある。考えてみたらここ20年、僕にとってはこういうランクはどうでもよくて、最大のポイントは純米か否かに尽きた。だから実は「上撰て、どんなの?」だった。
調べてみると、これは以前の特級・1級・2級という等級が廃止されたため、わかりやすいようにと蔵元が独自につけている格付けだという。多いのは特撰・上撰・佳撰というもので、おおむね等級に対応するらしいが、決まりはないので他にもいろんな例があるらしい。
さてさて、こうなると頼りは自分の舌だけだ。で、開栓。香りはさほど漂わない。まあ普通酒だし……。コップに注ぐ。写真は曇ってしまったが、ほとんど無色透明。と思ったら、微妙に黄みがかっているようにも見える。
鼻に近づけて香ってみる。実はここでツンとくると思ったが、冷蔵庫で冷やしていたせいか、穏やかだ。口に含んでみる。お、穏やかな甘みを感じる。伏見の酒は甘い、というのはこういうことなのかと思ったくらいだが、とにかくもっと鼻にツンとくると思っていたから「いけるやん、これ」というのが第一印象。そう、期待しなかっただけに印象がいいケースなのだ。そしてこれまた、次第に辛くなる。
ただ、コップに2杯飲んだところで、体調のせいもあるのか、体が受け付けなくなってきた。3杯目はいらないと言っている。冷やしてアテもなく酒だけを飲むというのは、きっと飲み方を間違えたのだろう。燗して鍋などつつく、というのがよかったのではないかと思う。夜中なのでもう鍋はできないが……。
(記/2005.12.3)
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