[京のお酒エッセー 2005.12]

小国文男
京のお酒エッセー

純米吟醸「招徳」しぼりたて(招徳酒造)

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【データ】
純米吟醸「招徳」しぼりたて
醸造元:招徳酒造株式会社
製造年月:2005年12月
原材料名:米・米麹
精米歩合:60%
アルコール分:16度以上17度未満

 こまれで約2年をかけて、伏見のほぼすべての酒蔵をめぐってきた。
 実は宝酒造だけ書けていないが、ここは「松竹梅」であり「純」であり「カンチューハイ」などでよく知られた大手。これまでの人生のどこかで必ずや飲んでいたはずだ。書きながら自然と純米吟醸がメインになってきているこのシリーズだが、Webサイトを見ても、気になるそれらはおおむね灘の蔵で醸されているらしい。
 そんなわけで、ここについては機会があればふれることにして、次はさらに気になる伏見のお酒や京都府内のお酒へと話を広げていこうと思う。

 さて新酒の季節だ。新酒入荷のたよりも聞けば、飲まない手はない。今年は寒波の到来が早いような気がするが、醸造には寒い方がいいという。そんななかで目にとまったのが「招徳」のしぼりたてだった。
 ラペルには次のように書いてある。
「底冷えのする酒蔵で、早朝にしぼったできたての新酒を、濾過も火入れもせずその日のうちに瓶詰めした、しぼりたてです」
 箱には「温度を加えますと醗酵で出来た炭酸ガス分が蒸発して爽快さが失われます」とある。お、炭酸ガス。すると活性酒? ちょっと期待がふくらんだ。

 開栓してコップに注ぐ。瓶を見ても明らかだが、お酒は少し黄みがかっている。少し甘いような芳醇な香りが鼻腔をくすぐる。口に含めば旨みを感じる口当たりだ。
 さすがに、お酒の圧搾機から出てくる「たれくち」を直接飲ませていただくことに比べると、炭酸ガスはほとんど飛んでいるように思える。だから活性酒とは言えないだろうが、ようするに原酒だ。香りと味には「濃い」印象が残る。このところ「濃い」のは好きだ。
 しかもこの香り、普段ならコップに数杯飲めば鼻の感覚が薄れていくところだが、まだしっかりと感じているのだ(相変わらず、どんな香りか表現できないのが辛いところだが……)。

 ついついクリームチーズがほしくなって、冷蔵庫から出してきた。けっこう合うような気がする。

(記/2005.12.17)

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