[京のお酒エッセー 2005.12]

小国文男
京のお酒エッセー

吟醸純米酒「金鵄正宗」(キンシ正宗)

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【データ】
吟醸純米酒「金鵄正宗」
醸造元:キンシ正宗株式会社
製造年月:2005年12月
原材料名:米・米麹
原料米:京都産祝100%
精米歩合:55%
仕込水:常盤水
アルコール分:14度以上15度未満
使用酵母:自家酵母
杜氏:小西正二(丹後杜氏)

 キンシ正宗で前回飲んだのは酒造り体験で醸されたお酒だった。それだけに純米吟醸の斗瓶取というぜいたくなものだったが、今回は通常流通している商品から選んでみようと思った。
 いつもの油長さんで、ラベルにもまともに「正宗」とあり、銘柄そのままの「金鵄正宗」が目にとまったので、これぞ正統かと思って求めてみた。「鵄」は「トビ」と読むようだから、「キンシ」は「金のトビ」ということらしい。

 ところが、蔵元のサイトを見ても、商品一覧でこのお酒が見あたらない。限定品なのかもしれない。
 そればかりか、正面から「キンシ正宗」と銘のついたものさえ見あたらない。並んでいるのは、最高級の「松屋久兵衛」を筆頭に「平安のしらべ」「平安の舞」「京の寒梅」「荒武者」「金閣」など。もちろんすべて「キンシ正宗○○○」となるのだろうが、なかに唯一それらサブ(?)銘柄のない純米大吟醸酒がある。これがいわば正統「キンシ正宗」なのだろうか。
 今回買ったのは、データ的には吟醸純米酒「平安のしらべ」と一致するのでそれに近いのかとも思うが、詳しい事情はわからない。ただ、今回の瓶のラベルが他のどれよりも正統派っぽいと思え、けっこう気に入ってしまった。

 栓をあけていつものコップに注ぐと、ほぼ無色透明。香りをかぐと、ん? 一瞬鼻をかすめたのは、かすかにリンゴのような香り? 少し甘酸っぱいような、やわらかい香りが漂う。口に含んでもふっくらとやわらかい感じで喉に心地よい。
 アテが欲しくなるかどうかという僕的な甘辛基準で言えば、今日はさっきから生協のポールウインナーが心地よい酒の友になっている。あっという間に3本食べたからけっこう欲しているが、かといってさほど辛口という感じでもなく、やや辛に近い中口といった印象。なんというか、これまでになく杯が進む感じがする。

 余談だがこのウインナー、いわゆる本格的なものではなくて、20cmくらいの棒状の、まあどこにでも売っているようなタイプの10本セットのもの。どうしたわけか僕はこれが好きで、おやつ代わりに食べたりする。ただこれもいろんな種類があるようで、いろいろ食した結果のお気に入りが、この生協のポールウインナーという次第。だからこれが冷蔵庫に入っていると、あっという間になくなってしまうわけだ。

 この蔵、次のターゲットは「松屋久兵衛」と思っている。精米歩合35%の純米大吟醸。実はこの夏、油長の利き酒カウンターでのテイスティングではあっさり感が強くて拍子抜けしたひとつだったのだが、もう一度じっくり味わってみたいと思っている次第。

(記/2005.12.22)

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