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京都の地酒を並べるなら、この「一吟」を外しては失礼だろう。2002年秋の第1回全国日本酒コンクール純米吟醸純米大吟醸部門第1位の銘柄で、さらにこの蔵は全国新酒鑑評会で8年連続金賞を受賞しているという。
実は昨夏、キンシ正宗の「松屋久兵衛」とともに油長さんで試飲した。このときは両銘柄ともに、思ったよりあっさり感が強くてやや拍子抜けしたところだった。でも、もう少しじっくり味わってみたいと思い、今回セレクトしてみたのだった。
たまたま少し前、月桂冠大蔵記念館の栗山一秀名誉館長の京都新聞での連載「酒よもやま話」で、きき酒がテーマになっていた(4/26付)。「上だち香」「含み香」「引き込み香」についてや、少量の酒を舌の上でころがすようにして、舌先で甘みを、縁で酸味を、舌根で苦味を味わうことなどが書かれていた。せっかくなので、これを参考にしてみようと思った。
開栓した。酒はすっきりと無色透明だ。まず「上だち香」は、常温で揮発する成分の匂いだという。好みの吟醸香だが、あいかわらず表現に悩む。
次に、少量の酒を口に含んで空気を吸い込むと鼻に抜ける「含み香」を感じるという。え? 口に含んでどこから吸い込む? 口から? 無理……。鼻から吸い込んで鼻に抜ける? うそぉ……。あっ、ゴクン……。酒をはき出したあとに感じるのが「引き込み香」だそうだが、飲んじゃった……。気を取り直して再び口に含み、舌の上でころがしてはみたが、うーむ、含む量が多すぎたのかもしれない。
こんなドタバタで、結局なんだかよくわからなくなってしまった。利き酒ってものすごく難しいものなのだ、と実感。ま、僕はいつものように気楽に飲むのがいいようだ。
仕切り直し。やっぱりこのお酒、キュッと冷えているよりも常温に近い方が香りもいいし旨みを感じる。昨夏は、冷えていたのであっさり感が強かったのではないかと思う。ラベルに「淡麗辛口」とはあるが、感覚的に、そんなに辛口とは思えない。冷やせば淡麗辛口に近いが、常温だと味のある、いわゆる旨口といったところではないかと思う。
今夜はアテに、冷蔵庫にあったソーセージを切ってきた。そして、ソーセージが口にある間に酒を飲んでみた。じゃまではなかった。むしろこちらの方がいずれも美味しい。お酒だけだとまったり感が残る感じだが、ソーセージと一体になってやや辛く、そしてややまろやかになったあたりが、ちょうど旨い加減のように感じた。
(記/2006.5.1)
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