[京のお酒エッセー 2006.6]

小国文男
京のお酒エッセー

純米吟醸原酒「六友(りくゆう)」(羽田酒造・京都市)

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【データ】
純米吟醸原酒「六友」
醸造元:羽田酒造有限会社
製造年月:2006年5月
原材料名:米・米麹
原料米:五百万石(京都府美山産)
精米歩合:50%
アルコール分:17度
日本酒度:+1
酸度:1.5
アミノ酸度:1.3

 よく考えたら、京都市内にもう1軒の蔵元があった。2005年の合併により京北町が京都市になったので、周山にあって「初日の出」で知られる羽田酒造も、京都市内の蔵元となっていたのだ。うっかりしていた。

 実はこの蔵には、思い出がある。雑誌の仕事で8年ほど前、地ビールの取材に行ったのだ。この蔵は、周山街道ビールの醸造元でもある。
 その取材の折、社長さんが酒蔵を案内してくださった。もともと日本酒の蔵だから、そっちをこそ見て行け、と言わんばかりだ。
 ちょうど仕込んだ醪が発酵しているところだった。階段で、ずらりと並んだタンクを上から見られるところまで上がる。うながされて香りをかごうと、顔をタンクの上に突き出したら、強烈な香りが鼻を襲って、思わずのけぞった。
「あっはっはっ。初めてやな」
「はあ……」
「こうするんや」
 社長さんは、腕を大きくタンクの上に出し、自分の方に仰いでみせた。それを真似ると、穏やかな香りがやってきた。
 そして、最後に「これ飲んでみ」と渡されたひしゃくのたれくち。生まれて初めて味わう炭酸味の日本酒だった。当時まだ、発酵の仕組みをよく知らなかったから、かなりの驚きだった。だから、僕のたれくちの原体験はこの蔵にある。

 そんなことを思い出し、出かけたついでに京都駅の伊勢丹地下で買ってきた「六友」は、どうやら新しい銘柄らしい。日本酒度が「+1」の中口、コクは「濃醇」とあったのは、あとから知った。
 ちょっと甘いかな、と思いながら栓をあける。コップに注ぐと明らかに透明ではなく、淡い琥珀色。香りは吟醸香。ほんの少し舌先に乗せてみると、思ったほど甘くないのはわかったが、その他は少なすぎてよくわからん。なので、ぐびっと口に含んで喉に落とすと、残り香がこれまでにない香り。相変わらず表現できないのが辛いが、もしかしたら伏見との、米と水の違いかもしれない。ここのは桂川のかなり上流にあたる、上桂川の伏流水だという。
 さらに、少し酸味を感じるような気がした。酸度が1.5というのは、このコーナーで飲んでいるお酒のなかでは少し高めのようだ。

 それにしても、最初に少し甘く感じても、いつまでも甘くないのが京都のお酒のいいところのように思う。酔うほどに辛く感じられるのは心地よい。最初から辛いのは、味気ない気がする。

(記/2006.6.27)

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