お酒は通常、絞ったあとに一度火入れをして貯蔵・熟成し、ひと夏越した秋に再び火入れをして瓶詰め・出荷されるという。だから普通は、秋に出回るのが新しいお酒だ。
このとき、火入れをせずに冷やのまま瓶詰めするお酒を、特に「ひやおろし」と呼ぶという。
蔵元のWebサイトを覗くと、伏見酒造組合では今年から9月9日の「重陽の節句」を「ひやおろし」の解禁日とし、いっせいに発売されたようだ。
「重陽」というのは中国の古事に由来するらしい。中国では奇数が縁起のよい「陽」の数とされ、9月9日はその最大の「9」が重なることから「重陽」として節句のひとつとされてきたらしい。ようするに、とても縁起のよい日ということだろうか。
初めて意識して「ひやおろし」を飲んだのは2年前、「招徳・月遊び」だった。今回は「富翁」のひやおろしを求めてみた。
開栓すると、吟醸香がこぼれ落ちた。コップに注ぐと、明らかに無色透明だ。口に含む。柔らかい。かすかにブドウのような香り。もしかしたら巨峰かもしれない。秋だけに、ちょっとそんな気がした。
日本酒度は+4だから数値的には辛口なのだが、最初の感覚としてはいわゆる旨口だ。ようするにちょっと甘い感じ。やや低めの酸度のせいかもしれない。僕的には味があって好感度は高い。
とはいえこのあたり、人によって感覚はさまざまなようだ。僕は甘いかなと思っていても、他人にすすめたら「辛口や」と言われたこともある。
コップ3杯目くらいからアテに、たまたまあったピーナッツを出してきた。日本酒にピーナッツというのはあまりないかもしれないが、意外にもこれがなかなか面白い。あまり進まないかと思っていたが、ピーナッツも予想以上に減るし、お酒もますます旨い。つまり、なかなか合うわけ。
このシリーズで四合瓶を一気に飲んだケースは少ないが、もしからしたら今夜は……、と思えてしまう減り具合だ。さてこれからどうなるか……。
結局、全部飲んでしまった。最終盤はピーナッツもなくなって、いつもの生協のボールウインナーが登場したが、お酒はすでに、すっかり辛口になっていた。
まあようするに、旨かったんだ。なんちゅうか、身体が反応していた感じ……。
(記/2006.9.23)
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