モカチュー
焼酎の一升瓶の半分近くまで、コーヒー豆がそのまま入っている。マスターがそれを、氷の入ったグラスに注ぐ。見た目はウイスキーのようだが、水割りよりは色が少し濃い。 「これ、なかなかいけますよ」 すすめられて飲んでみた。うん、確かにコーヒー味の焼酎だ。 「スッキリしてますね」 「でしょ。いろいろ試したんよ」 「水出しコーヒーみたいなもんやな」 常連とおぼしきお客さんも言う。
「コーヒーは何ですの?」 「モカ。モカ以外はダメ」 「モカ好きですねん。どれくらい入れるんすか?」 「だいたい。ここには200g入ってる」 「焼酎は芋?」 「麦。芋だとうまくいかない」 「量は豆が浸るくらい?」 「いや、いっぱい入れてる」
マスターは、少なくなったら焼酎を注ぎ足して、すぐまたグラスに注いでいたが、別に味が薄くなったような感じはなかった。帰るまでずっとそれを飲んでいた。 「モカの焼酎やし、モカチューやねえ」 「なんやピカチューみたいやな」 「まあ、よろしやん」 と、勝手に名前をつけて帰ってきた。
|