名刺入れ
仕事で近くまで行ったので、十数年ぶりにその喫茶店を訪ねてみた。勤めていた頃の職場がその近くにあり、昼休みになればほとんど毎日、昼食を食べに通っていた。白い外観のその店は、当時のまま営業していた。
「立派なヒゲを生やさはって、一瞬誰やろと思いました」 と、当時のままダンディな感じのマスターが微笑む。 そうだった。立派ではないが、ヒゲは脱サラしてから生やしたのだった。やっぱり、辞めてから一度も来ていなかったことになる。
当時と同じようにドライカレーを食べてコーヒーを飲み、いっしょだった仕事仲間としばらく打ち合わせをして店を出た。
ふと思い出した。いまも使っている名刺入れは、この店が新装オープンした時にもらった粗品だったのだ。おそらく15年くらい使っているのではないかと思う。話題にすればよかった、と思った。ま、また寄ればいいか。
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