耳かき
真偽のほどは知らないが、聞くところによると、耳垢が乾いているのは大陸系の、湿っているのは南方系の、それぞれ渡来人の系統なのだそうだ。 僕は乾いている。すると僕の先祖をたどると、ひょっとしてモンゴルあたりにたどり着くのかもしれない。 ちなみにわが家では、女房が湿っている。上の娘は乾いていて、下の娘は湿っている。
乾いているので僕は、ずっと一貫して「耳かき」を利用している。そう、先端が茶杓のようになっているものだ。こいつでひっかき出すのが実に気持ちよい。もちろん上の娘も「耳かき」派だが、女房や下の娘はもっぱら綿棒である。 ところがこの頃、耳そうじをしようとしてその「耳かき」が見あたらない。もしかしてと思っていたら、この4月から神戸で一人暮らしを始めた上の娘が持って行ったという。先日帰ってきた折りに白状した。
「お父さんがいつまで持つやろかと思ってたわ」 「何言うてんねん。どうすんねん!」 「そんなん、コンビニでもどこでも売ってるやん」 「そうか。ほなまあ……、ええか」
実は僕は、わが家で使っていた耳かきを、どこかの民芸品のお土産だとばかり思っていた。なのでコンビニで買えるというのは、ちょっとしたカウンターパンチだった。 で、今日になってようやく、コンビニで耳かきを買ってきた。意外にもそれは木製だった。さっそく耳そうじをした。スッキリした。 よく見ると、これまで使っていたものとほとんど同じだ。なんや、あれもコンビニで買ったものだったんや。
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