胃カメラ初体験
健康診断は毎年受けているが、先日は初めて胃カメラを体験した。ちょっと鳩尾付近に痛みを感じたこともあったし、たまには詳しい検査も必要だろうと思って申し込んだのだった。
前日の午後9時から絶食。病院の胃カメラ室に入ったのは午前9時過ぎだった。 「初めてですか?」 「はい……」 「じゃあこれ、読んでおいてくださいね」 待合室の壁には、前準備についてや楽に受検するコツなど書いてある。しんどいのは飲み込む時とは聞いていたが、「コツはゴックンと飲むこと」とある。ふむふむ……。
「これ、胃の泡を消すお薬です」 看護師さんがやや大きめの紙コップを持ってきた。どれだけ入っているのかと思ってちょっと構えたが、底の方にほんの少しで、なんとか一気に飲めた。 「これ、ノドの麻酔をするアメです。口の奥の方でなめてください」 10円玉ほどの平べったいアメに、何やら茶色いものが塗ってあるような感じ。なめ出すとそんなにまずくはない。しばらくすると、なるほどノドの方がしびれてきた感じだ。
「ウェッ」 奥の検査コーナーからおう吐のような声が聞こえた。何やら声をかけているような話し声も聞こえる。検査が行われているらしい。 「アメ、なくなりました? まだ? がんばって……」 どうやら前の人が終わる模様だ。ちょっとあせった。アメが終わると、ノドにスプレーをし、さらに胃の動きを抑えるという注射を肩にして、検査コーナーに導かれた。
「はい、こちらに横向きに横になってください」 細長い寝台だ。訳はわからないが、最初は右向きに横になり、すぐにクルリと向きを変えられた。左向きで横になっている。 「よだれが出ますが、飲み込まないでダラダラ出してください」 医師の話にうなづく。よだれ用に小さなシートが敷かれ、マウスピースがつけられる。そして、先端が照明でピカピカ光った胃カメラが口の中に入ってきた。わりと楽かなと思っていたら……。 「はい、ゴックンしてください」 まだだった。とはいえノドはしびれているし、うまくいかない。するとグッと入ってきた。 「ウェッ」 さっきの声の正体をようやく理解した。
医師はモニタを見ながら胃カメラを操っている。少し上目使いになれば見えないこともないが、気分的にそれどころではなかった。やはり、ノドの奥に異物が入るというのはしんどい。目を閉じてひたすら深呼吸をしていた。 「あれ、胃潰瘍をされましたか?」 医師が聞く。口は動かへんのに、どうやって答えるねん。仕方がないから、小さく首をふる。 「潰瘍ができて、ほとんど治った跡がありますよ」 「はあ……」 心の中でうなづいた。痛かったのはそのせいだったのだろうか。
「はい、息を止めてください」 しばらくゴソゴソしていたようだったが、その声で息を止めるとスッとカメラが抜かれた。 「終わりましたよ。よく頑張りましたね」 マウスピースがはずされ、寝台の上に起きあがった。正味は5分ほどだっだろうか。ホッとした。
健診終了後、すすめもあって内科を受診し、特段の心配はないが念のために、と胃潰瘍の薬を出してもらって帰ってきた。さすがに今年は、少々疲れた健診だった。
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