[えでぃっとはうすのときど記]

頸椎症性神経根症

 「頸椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけんこんしょう)」という舌を噛みそうな病名は、初めて聞くものだった。首の、神経が通る部分の骨にトゲ状の突起ができて、それが神経を刺激することにより、手腕や肩が痛んだり指先がしびれたりするのだという。

 右腕に痛みを感じ始めたのは4月の初めだった。日を追って痛みが増していった。そのうちにマウス操作やキーボード操作に影響し、わずかなテキスト入力でも右肩に響いた。おかげで左手だけでのマウスやキーボード操作を強いられ、仕事にも差し障るようになった。
 過去にも仕事が集中して腕を酷使した後、同じように右腕が痛んだことがあった。整形外科に通って電気治療をしたり、鍼に通ったりした。治るのに3〜5か月かかった。だから「またか……」という気分だった。
 もっとも今回は少し様子が違った。腕を酷使するほど忙しくはなかったのだ。だから「はて……」でもあった。

 マッサージをしてもらおうと思って整形外科を受診した。腱鞘炎のようなものではないかとのことで、右腕、右肩の電気治療とマッサージが始まった。連日この物療に通ったが、よくなるどころかますます痛くなった。
 特に仰向けになる際、胸から肩にかけての筋肉や背中の肩胛骨あたりの筋肉に強い痛みが走った。しかも、通常なら腕を投げ出した仰向け状態は楽なものだが、腕を支える胸付近の筋肉が痛み、とても仰向けではいられなかった。
 そのため右腕を上にして横向きになり、腕を頭上に上げるなどして比較的楽な姿勢を探しながら眠ったが、布団のなかが苦痛だった。

 この頃から1日2回の痛み止め薬を処方してもらった。薬が効いている間は確かに楽だったが、6時間ほどで薬が切れると、次に飲むまではやはりきつかった。
 この時期、右手の人差し指や中指にしびれも感じるようになり、気持ちがいいはずのマッサージさえ触られるだけで痛いほどだった。
 ここに至り、割り切って仕事量を大幅ダウンし、しばらく治療に集中することにした。

 4月の中頃、医師にこの状況を訴えると、そうなら首由来ではないかとのことで、レントゲンを撮って調べてもらったところ、「頸椎症性神経根症」と診断されたのだった。症状がピタリとはまっていたので納得できた。それにより、物療のターゲットに首が加えられた。
 自分でもネットで調べてみると、枕を高くして首を前に曲げるような姿勢にすると効果的との情報があった。
 さっそく試してみると、確かに角度によって神経への刺激が消えるポイントがあるように感じられた。その時の右腕は指先のしびれが残るもののとても楽で、炎症は腕や肩で起きているのではないのだ、と実感できた。
 そういえばそれまで、座椅子に座って背を少し倒した状態が比較的楽だったが、知らずに首を前に倒す姿勢になっていたからだと納得できた。

 そしてこれにより、仰向けの姿勢が痛みをコントロールできる姿勢に、劇的な変化を遂げた。おかげでその日から、ずいぶん楽に眠れるようになった。日中も痛みがきつい時は、枕を高くして仰向けに寝るようにした。
 痛み止めも1日3回に増やしてもらい、引き続き連日物療に通った。電気治療もマッサージも、首回りを中心にしてもらった。なんでも、神経根の炎症を抑え、神経の通り道付近の筋肉をゆるめることなどで、神経が刺激されないようにする効果があるらしい。
 5月の連休明けからは「トリガーポイント注射」と呼ばれる注射もしてもらった。

 変化が感じられるようになったのは5月下旬頃からだった。
 1日3回飲まずにはいられなかった痛み止めが、1日2回、1日1回、1.5日に1回、2日に1回……、と次第に頻度を下げられるようになり、現在は10日以上飲まずに過ごせている。薬がない分、首のだるさなどを感じたり、天候の変化などを首に感じたりすることもあるが、辛抱できないほどではなくなった。

 そんなわけで今回もまた3か月ほどかかったが、このまま無事に治ってくれればと期待しつつ、仕事も本格的に再開することにしたところだ。

 ※下写真は、この療養中にちょっと片付けた事務所。

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(記:2010/06/25)



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