[2010.1]

田中飛鳥井町 いのちのカルテ

門祐輔編/(株)かもがわ出版/四六判160ページ/定価1,000円+税



田中飛鳥井町 いのちのカルテ

 「田中飛鳥井町」は、この本の編者・門祐輔氏が院長を務める京都民医連第二中央病院の所在地です。この本は、その病院の医療実践の一端をルポルタージュしたもの。私は今回、その執筆のお手伝いをしました。
 実はこのタイトルは難産でした。病院の医療実践を描くというコンセプトはハッキリしていましたが、数十本の案が出ては消えていました。もう今日決めないと装丁が間に合わない、という状態で迎えた年末のある日、病院の担当者に出版社の担当者、それに私も含めて机を囲み、文字通りウンウン唸っていました。

「……」
「『田中飛鳥井町の医療』というのは?」
「あ、それいいですね!」
「『京都民医連第二中央病院』を別の言い方にしてみたんですよ」
「なるほど!」
「『医療』という部分をもうひと工夫したいですね」
「記録とか事件簿みたいなのを医療分野で言えば?」
「そりゃ『カルテ』でしょ」
「じゃあ『田中飛鳥井町のカルテ』……」
「うん、もうひといきですね!」
「『○○のカルテ』としたいですよね、やっぱり」
「……」
「『命』はどお?」
「うん、『命』は入れたいですね」
「じゃあ『田中飛鳥井町 いのちのカルテ』は? 『命』はカナで」
「いいですね!」
「『田中飛鳥井町』と『いのちのカルテ』の間に『の』は入れない?」
「半角アキにしましょう」
「じゃあ、これで決まりでいいですか?」
「賛成!」
「ああ、やっと決まりましたね」
「集団の力ですね」

 というわけで、やっと決まったタイトルに全員がホッとしたものでした。
 こんなことに加え、初めて挑んだ医療分野のルポでもあり、私にとっても心に残る1冊になりました。


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