[2013.9]

認知症ケア これならできる50のヒント

奥村典子・藤本直規著/(株)クリエイツかもがわ/B5判80ページ/定価2,000円+税



認知症ケアこれならできる50のヒント

 認知症ケアに関する具体的なヒントをフルカラーのイラストとともに50例にまとめた、実践のための手引き書です。私はこの本で、編集と執筆のお手伝いをしました。

 何度も構成の検討を繰り返していたある日のことでした。著者から示されたA3判の用紙には、ケアに困ったケースが中央にいくつか描かれ、そのまわりに具体的な対応策がいくつも書き込まれていました。
 ケア素人の私には、とりあえず思いついたことを羅列したように見えました。それで私は、困ったケースと対応策を線で結ぶように整理をしていきました。こういう場合にはこうするといい、ということなのかと思ったからです。

 ところが、次の打ち合わせで著者から「違う」と指摘されました。1つのケースには原因がいくつも考えられ、それに応じた対応策もいくつもあるので、1対1でつながるものではない、とのことです。
 たとえば、コーヒーは好きなはずなのに飲まずにいるとしたら、それがコーヒーと認識できなかったり、いつものコップと違って自分のものと思わなかったり、コップの持ち方がわからなかったりと、さまざまなケースが考えられるといいます。なるほど、そうなら対応がいくつもあるのは当然で、安易に対にしようとしたことが恥じられました。

 で、そうなると編集の仕事としては、それを紙面でどう表現するのか、ということです。そこで「このメモをそのまま、イラスト的な目次にしては…」と提案したのでした。
 実際の本では各編の中扉が、それをベースにしたものになりました。たとえば「食事偏」の中扉では、ざっくり「食べない・飲まない」とまとめられるケースについて、全体を俯瞰するように24のヒントが示されています。もっとも、これで著者の意図が伝わるだろうかと考えると、少々不安があるところです。

 結局、目の前の人をよく観察し、そこからその人に合った対応策を考えるのが最も大切で、だから本のタイトルも「ヒント」なのだと思います。


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