[2015.10]

いのちをつなぐ無料低額診療事業

吉永純・公益社団法人京都保健会編著(株)クリエイツかもがわ/A5判212ページ/定価2,000円+税(2015年10月刊)



いのちをつなぐ無料低額診療事業

 「無料低額診療事業」とは読んで字のごとく、無料または低額料金で診療を行うもので、主としてお金に困っている人を対象にした事業です。実は私もよく利用する病院の話なので、この事業のポスターなどは見ていたはずですが、正直なところ、あまり気にとめていませんでした。

 この本づくりに関わるようになって、思い出したことがありました。1980年代、初めて自分が社会保険の被保険者本人となったときのことです。待合室で会計を待っていてもちっとも呼ばれないので尋ねると、「会計はありません」と言われたのです。当時まだ被保険者本人は10割給付で、自己負担はありませんでした。その後制度は変わり、いつの間にか病院に行けばお金を払うのが当たり前の感覚になっていました。

 この仕事のなかで、誰であろうと医療費は本来無料であるべきとの話を、何度となく聞きました。そういえば自分も、それが当然の未来の方向だと思っていたはずだったのに、すっかり忘れていたことに気がつきました。医療現場の人たちはその思いを持ち続けて、努力を続けていることにも驚きました。おかげでそのことを、改めて再認識できた気がします。

 私はこの本で、全体の編集と事例の取材・執筆を担当し、ソーシャルワーカーさんや患者さんたちから聞いた話を、ワーカーさんの目線でまとめています。しばらくぶりの医療分野の仕事でした。


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