[1999.4]

「京の味散歩」99年版

京都朝日事業センター発行、企画・編集/(株)クリエイツかもがわ、部分取材&原稿



とれとれ地ビールってフルーティーなんだ
京の地ビール醸造元飲み歩き

 グビグビ飲んでプハー! これがビールの醍醐味というものだ。ところが地ビールの登場で、これにもう一つの楽しみが加わった。フルーティーな麦芽の香り、これぞ地ビールの象徴だろう。それぞれの香りやコクの違いをぜひ味わいくらべたい。
 地ビールの多くは、上層に浮かんで発酵する上面発酵酵母を使用しているが、これはフルーティーなビールに仕上がる一方、賞味期限が短いのが特徴。だからまさに生鮮飲料だ。それだけに醸造元で飲むできたての地ビールはうまい。ちなみに、大手メーカーのビールは下面発酵酵母を使用している。
 地ビールが登場したのは、1994年にビールの最低醸造量が60キロリットルに引き下げられて以来。全国の地ビール醸造所は現在250か所以上を数える。京都府内では95年の黄桜麦酒を皮切りに、現在では6か所になった。そのうち京都市内及び近郊の4か所の醸造元を訪ねた。

黄桜麦酒
黄桜麦酒 撮影/豆塚 猛
北白川地ビール
北白川地ビール 撮影/豆塚 猛
町家麦酒
町家麦酒 撮影/有田知行
周山街道ビール
周山街道ビール 撮影/塩田理生

●黄桜麦酒……黄桜酒場 Kizakura Kappa Country
 ケルシュ、アルト、ゴールドの3タイプ

 黄桜麦酒は1995年、黄桜酒造から登場した京都で初めての地ビール。桃山御陵山からの地下水系を中心に広がっている伏水を使い、ドイツのケルン地方でよく飲まれているケルシュタイプ、同じくデュッセンドルフのアルトタイプ、酒造会社ならではの清酒酵母を使ったゴールドの3種類がある。おだやかな麦芽の香りのケルシュが人気で、自家製ソーセージとよく合う。黄桜酒場は連日カップルやグループで賑わっているが、ビール好きにおすすめは蔵を改造したカウンターコーナー。目の前のビールタンクを眺めながら飲むのはなかなか乙だ。酵母を変えたりアルコール度数を上げたりと常にいろいろな試みをしており、時期によってはそれらを味わえるチャンスもある。

●北白川地ビール……リカーマウンテン・ブルワリー北白川
 白川麦酒など6種類を飲みくらべる楽しさ

 北白川地ビールは1996年、リカーマウンテンが送り出した。タイプは全部で6種類。支配人の居川高雄さんは「ビールにもいろんなタイプがありますから、それらを楽しんでほしい」と話す。メインの白川麦酒はイギリスのエールを基本としたタイプ、ウィートエールはドイツで親しまれる小麦を使用したタイプ、ブロンドラガーはアメリカ西海岸で人気のタイプ、ピルスナーはチェコのピルゼンが発祥、長浜エールは通常の3倍の麦芽と2倍のホップを使用、黒ビールのスタウトは少しどろっとした触感が美味。パブレストランとコイン・バーがあるが、あらかじめコインを買うスタイルのバーは内税でもあり、安くて気楽に飲める。目の前のビールタンクから直結だ。

●町家麦酒/花街麦酒……キンシ正宗堀野記念館
 京風ネーミングの「まったり」と「かるおす」

「京都の味と調和するビールをつくりたい」と地ビール醸造責任者の三好ちづ子さんは話す。ドイツのケルシュタイプの町家麦酒は「かるおす」、同じくアルトタイプの花街麦酒は「まったり」とネーミングも京風で、1997年に登場した。芳香な麦芽の香りと濃厚な飲み口に、京野菜のおつけものがピッタリくる。堀野記念館は「キンシ正宗」発祥の地で、町家そのままの博物館。庭に湧き出す桃乃井は京の名水「染井の水」と同じ水脈で、同酒造の基礎を築いたもの。ビールにもこの水が使われている。記念館奥の蔵を改造した地ビールコーナーは、こぢんまりとした、落ち着いてビールを楽しめるスポット。頼めば京の老舗のお弁当なども取り寄せてもらえる。

●周山街道ビール……羽田酒造蔵元麦酒館
 ケルシュとヴァイツェンの2タイプ

 周山街道ビールは桂川上流の伏流水で仕込んだ地ビールで、「初日の出」の蔵元、京北町の羽田酒造が1997年に送り出した。ドイツのケルン地方のケルシュタイプと、バイエルン地方のヴァイツェンタイプの2種類。ケルシュは発酵終了後3週間の熟成を経てまろやかな仕上がりに、小麦を使用したヴァイツェンはほのかな酸味が特徴。「今後はエールタイプにも挑戦したい」と羽田裕社長は意欲的だ。同酒造麦酒館の3階にあるビアハウスでは、地ビールやお酒とともに北桑田郡の地場の味が楽しめる。つきだしに出てきた炒った大麦は意外だったが、これが香ばしい。鹿肉のしぐれ煮はなかなかの珍味、美山町の手作りウインナーも美味だ。姉妹品の「京都散策麦酒」も一献。

(取材・文/小国文男)

※実際の掲載紙には上記のほかに地図や住所、営業時間などを書いたキャプションがつきますが、ここでは割愛しました。


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