京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
「丹州(たんしゅう)」とはこの場合、京都府中部の丹波地方のことらしい。現在の丹波、丹後、但馬の各地方を勢力としていたという古代の「丹国(にのくに)」の別称でもあるらしいが、丹波単独でもこう呼ばれたことがあるという。これを由来として名づけたのであろう綾部市の「丹州河北農園」で農薬を極力使わずに栽培された山田錦を、北川本家が醸したものだという。
お酒は通常、絞ったあとに一度火入れをして貯蔵・熟成し、ひと夏越した秋に再び火入れをして瓶詰め・出荷されるという。だから普通は、秋に出回るのが新しいお酒だ。
このとき、火入れをせずに冷やのまま瓶詰めするお酒を、特に「ひやおろし」と呼ぶという。
伏見、大手筋通り。商店街から西へ少し歩いた濠川(ほりかわ)にかかる橋のたもとに「おきな屋」という酒と米の専門店がある。そのあたり一角を占める酒蔵・北川本家直営の店だ。
若い頃、心の底から「うまい」と思って酒を飲んだことはなかった。なのになぜ飲んでいたのか。ひとことで言えばそれは「ミエ」にほかならない。酒が飲める、酒に強いということが、一人前の条件のように思えたからだった。