京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
しばらくぶりに油長さんの通販サイトをのぞくと、「初夏のお勧め 時期限定酒」というキャッチでこの「生詰」が目に止まった。「生詰」というのはこの場合、瓶詰めの際の火入れ(熱処理)をしていないお酒のことだ。「英勲」の純米大吟醸で1,680円はお手頃と思えた。
「英勲」の齊藤酒造が全国新酒鑑評会で11年連続となる金賞を、今年は「祝」米を使ったお酒で受賞したいう。ここは「祝」を使ったお酒づくりの復活に最初から取り組んできた蔵だ。去年の蔵見学の折にも話題になって、控えめながらも挑戦したいという話も聞いていたから、なんだか感慨深い。その金賞受賞酒が発売になったと聞いて、「これは飲まねばなるまい」とさっそく買い求めてしまった。
もしかしたらこのお酒は、3月の蔵見学の折にタンクから汲んだ醪(モロミ)を飲ませていただいた、まさにそのお酒かもしれない。記録によれば、それは全国新酒鑑評会に出品予定のタンクということだったからだ。
油長さんからメールマガジンが届いた。英勲の「普段は蔵元の秘蔵酒として、イベント会場でのみ販売される限定品を今年度60本に限り当店で販売することが許可され」て、6月と9月に各30本入荷するという。どうも僕はこういうのに弱いようで、そんなレアものなら買わねばなるまい、とさっそく予約してしまった。
というわけで、先月に続いて今月も同じ蔵になった。
この夏、仕事仲間といっしょに久し振りに油長さんの利き酒カウンターに座る機会があった。一升瓶で買ったら1万円くらいするお酒も、ここでなら猪口で数百円。この際だからと、実は最初から高いお酒を狙っていた。
この「京の酒エッセー」は、まず伏見の蔵元をひととおりめぐり、それから銘柄ごとにいろいろ試してみようと思っていた。しかし油長さんの紹介を見て、蔵元重複がわかっているのに、どうにも飲んでみたくて辛抱できなくなってしまったお酒があった。
改めて購入した油長さんのサイトを見たら「当店の為だけに特別に瓶詰めをした」「しぼりたて生酒」とあって、季節限定200本だという。ずいぶんレアなお酒を手に入れたものだ。そのせいか瓶のあつらえもたいそうで、口には飾り紐までついている。
そんなお酒っていったいどんな味なのだろう、と飲む前からワクワクした。