京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
口に含んだ瞬間「やっぱりそうや」と思った。このお酒は冷やし過ぎない方がはるかに旨い。飲む前1時間あまり、冷蔵庫から出していたのだ。おだやかな吟醸香に包まれたやわらかい液体が、心地よく喉に流れ落ちていった。
キンシ正宗で前回飲んだのは酒造り体験で醸されたお酒だった。それだけに純米吟醸の斗瓶取というぜいたくなものだったが、今回は通常流通している商品から選んでみようと思った。
いつもの油長さんで、ラベルにもまともに「正宗」とあり、銘柄そのままの「金鵄正宗」が目にとまったので、これぞ正統かと思って求めてみた。「鵄」は「トビ」と読むようだから、「キンシ」は「金のトビ」ということらしい。
「斗瓶」(とびん)とは読んで字のごとく1斗、つまり10升(180リットル)入る瓶のことらしい。これ自体はただの瓶だが、これが「斗瓶取り」(「斗瓶採り」「斗壜採り」とも)とか「斗瓶囲い」とか言われると、とたんにそれは手間暇かけた特別な酒の代名詞になるという。