さすがはプロ?
「さすがにプロですね」
と言われたことが、これまでに3回ある。3回もあると喜べばいいのか、3回しかないと悲しめばよいのか複雑なところだが、面白いのはどんな時に言われたのかということだ。初めてそれを耳にしたのは、ある雑誌の第1号を編集・組版をした時だ。
編集に携わったのは、ほとんどが雑誌の世界には素人の方だった。僕も、出版社から依頼されて参加したのだが、実はこの仕事を始めたばかりだったので、DTPもまだ初心者だったし、まして雑誌の編集など初めてだった。あちこちの雑誌を参考にしながら、必死の思いで作り上げたのを覚えている。もちろん、仕上がりに自信など全くないし、どんな辛口の言葉が返ってくるだろうかと内心ヒヤヒヤしていた。
そんな時に「さすがにプロが作ると違いますね」なんて言われたものだから、「僕だってみなさんと何も変わらないのに」と恥ずかしかった。2回目は、同じ雑誌の対談のリライトでだった。3号目だから、最初からそれほど時間はたっていない。僕の状況はほとんど変わっていないわけだ。このとき、その対談の当事者から、
「見出しのつけ方がいい。ポイントをしっかり押さえてある。プロの嗅覚かなあ」
と言われた。その言葉が綴り方の専門家の口から出たものだったから、僕も少しはマシになってきたかと、今度は素直に喜んだ。これらはいずれもかれこれ3年ほど前のことだ。しかしそれから、この手の言葉は聞かなくなった。むしろ、「もっと考えてよ」というような部類の言葉が耳についた。
3回目に耳にしたのはつい最近で、久しぶりのことだった。あるところのホームページを作る仕事で、全体の構成案とともに、一部のページを実際に作って見ていただいたが、そのときに出た言葉だった。
「我々が作るのと全然違いますねえ。さすがはプロですねえ」
ホームページを作る仕事が入るようになったのは、ここ半年ほどのことだ。だいたい僕はデザインができないと自覚しているし、最近のホームページは凝ったものや動画などがあふれ、とても僕には作れないと思えるようなものが多い。だから、見やすく読みやすいということだけをポイントにして、気に入ってもらえないかもしれないけどできる範囲で一生懸命やろうと、これまた必死の思いで作ったわけだ。その言葉を噛みしめながら気がついた。プロ云々は、無心で作ったときの反応なのだ。「自分はプロでござい」なんてのぼせ上がった気持ちで作っていると、たいていダメなのだ。この仕事をやりだして4年余、振り返れば結局そうだったのだと思う。
よく言われることだが、やはり初心が大切なのだと改めて気づかせていただいたひとことだった。
(記/1998.5.6)
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