つまらない話をひとつ。 間違いの間違いは正解?
先日、取材で神戸にでかけた。その日は取材のハシゴで、午後から福祉関係の取材があり、夜は神戸という日程だった。
先の取材先から、出版社の人と待ち合わせている京都駅についたのは、約束の時間より少し早かった。コーヒーでも飲もうとうろうろしたが、どこもいっぱいだった。外から見たら空いていたホテルグランビア京都の喫茶は、やっぱりホテル料金、ひと休みには高かった。で、仕方がないから待ち合わせ場所の陸橋、ホームの上に向かった。すると目の前に喫茶店、しかしもう中途半端な時間しかなかった。
しばらく立っていると、東南アジア系とおぼしき外国人の若い男性が声をかけてきた。一瞬ドキッとした。なにしろ僕はその昔、米原から乗った電車の中で「Is this train for KYOTO?」と実にゆっくり、わかりやすい英語で問いかけられたが、「Yes」のひとことが言えずに「うんうん」と首をタテにふることしかできなかったのだ。それが脳裏をよぎった。
しかし彼は日本語だった。
「この電車、彦根に行きますか?」
立っていたのは東海道線(京都線)の上だったから、もちろん滋賀県の彦根には続いている。
「ええ、行きますよ」
僕は言い切った。彼はアリガトウと言って、ホームに降りていった。しかしよく考えたら、僕は神戸に行く予定だから、立っていたのは下り線だった。彦根は上り線でなければならない。異国で間違って教えられて、正反対の方向に行ってしまったとなっては申し訳ない。僕は彼を追いかけてホームに降りた。幸い彼はすぐに見つかった。
「すいません。さっき言ったのは間違いで、彦根は向こうのホームなんですよ」
僕は線路をはさんだ向かい側のホームを指さした。すると、
「ごめんなさい。姫路だったんです」
へっ? なんだ、姫路なら下り線のこのままでいい。
「あっそう。それならオーケーよ」彼は姫路と彦根を間違えて問い、僕は上り線と下り線を間違えて教えた。結果は正解だった。そういえば昔、「否定の否定は……」などと勉強したことを思い出した。
(記/1998.9.14)
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