このお酒は先日、油長さんで目にとまった。いまはもう幻とも言えるであろう銘柄「万長(万壽長命)」である。
聞けば、現在は「蒼空」として復活している藤岡酒造が一時廃業に追い込まれたとき、その銘柄だったこの「万長」最後のお酒を、どういう関係かは知らないが、豊澤本店が引き受けて貯蔵していたものだという。8年古酒らしい。
だからこのお酒、豊澤でも藤岡でもなく、蔵元は「万長」と思って書こうと思う。
念のために豊澤本店のサイトにもアクセスしてみた。少し詳しい情報があった。しかし「3年古酒」としてある。ありゃ、8年じゃないわけ? そうか、そのページを作った時が3年古酒の時だったのかと思って、ブラウザでページ情報を参照すると2004年3月が最終更新。うーん……。
とはいえ、藤岡酒造が一時廃業したのは95年というからすでに10年前。少なくとも3〜4年ものでないことは明らかだろう。
ちなみに、瓶に「製造年月」の表示はなかった。通常は瓶詰めした月が表示されるのだが、古酒の場合はどうなるのだろうか。よく考えたら、これまで古酒は買ったことがなかった。
いよいよ栓を開けた。コップに注ぐと、さすがに琥珀色とまではいかないが、明らかに黄味がかっている。鼻を近づけると、またしてもうーん、なんと言っていいのか……。酒が若い時ならたぶん「ツン」ときたのではないかと思える香りが「スン」くらいにまろやかになったような感じ……、うー、表現できん……、くやしい。
口に含んだ酒は、まさしくまろやかな感じ。すでに超辛ではない。かといって、ことさら甘いとも思えない。うまく調和した丸みといえばいいのだろうか。
少なくとも、かなり気にする僕でも、もはや醸造アルコールがどうのこうのというレベルではないお酒に思えた。年月がそれらすべてを馴染ませたということなのだろうか。
さっきからチーズをアテにし始めた。これがなかなか合う。ついついコップに四杯目を注いでしまった。
(記/2005.12.9)
|