[京のお酒エッセー 2007.2]

小国文男
京のお酒エッセー

純米吟醸「京のこよい」(山本本家・伏見)

写真
写真

【データ】
純米吟醸「京のこよい」
醸造元:株式会社山本本家
製造年月:2006年12月
原材料名:米・米麹
精米歩合:60%
使用水:白菊水(中硬水)
アルコール分:15.5度
日本酒度:+3
酸度:1.7
アミノ酸度:1.3
杜氏:黒野三代治(越前糠)

 2月もまた油長さん企画の酒蔵見学に参加した。今回は神聖の山本本家だった。で、買って帰ったのがこの「京のこよい」だ。
 このお酒は、「京のとき」と同じ「京の老舗酒蔵会(神聖、ふり袖富翁招徳、鶴正宗の5蔵で構成)」のオリジナル商品のひとつだ。

 酒蔵見学後の懇談で社長さんからいろいろな話を伺うことができたが、そのなかで「日本酒は食中酒」という言葉が印象に残った。
「お酒だけを楽しむ方もいらっしゃいますが、私どもは食事をしながら楽しめるお酒を心がけています」
 僕はどちらかと言えばその、お酒だけを楽しむ方だ。そこで、別の蔵でも聞いたが、ここでも質問してみた。
「食事をしながらの酒という場合、どんなところに配慮されるのですか?」
「香りですね。あまり強くないようにしています」
 なるほど、これは納得だ。確かに香りプンプンでは、食事の邪魔になると思う。

 そんなことを頭におきながら、このお酒を開栓した。少し香りがこぼれ出た。「なんや、香るやん」というのが正直なところだが、いやそんなことで文句を言ってはいけない。僕的には歓迎なのだから……。
 もっともこの香り、一瞬というか、そう長持ちするものでもなかった。酔いで自分の鼻がマヒしてきたのもあると思うが、そうなると甘辛が気になるところ。特別に辛いわけでもなく、やや辛といったところだ。
 ちなみにいつもの生協のポールウインナーを口に含みつつ飲んでみると、これはやや合わない感じだった。

 ところでもうひとつ気になったのが、残り香というか、量が少なくなった頃から飲み干したあとにかけてコップに残る香りだった。
 実はこの蔵では、見学の折に麹室も見せていただいた。システムが機械化されたところだったが、入ると一面にただよう香りがある。相変わらずうまく表現できないが、甘酸っぱいような、独特な香りのような気がした。
 それに似た香りがコップに残っているのに気がついたとき、あの香りや、とちょっとした感慨があった。酔うにつれ、次第にその香りをよく感じるようになってきた。
 それに、なんだかアテを欲するようになった感じで、さっきからわずかな間にボールウインナーは3本目だ。交互に食べて飲むなら相性はいい。
 その意味ではさすがに食中酒ねらいだと思う。

(記/2007.2.20)

][