[ひとりごと(1998.9.19)]

QuickDrawプリンタはPICTがお好き?

 つい最近、必要に迫られてエプソンのバブルジェットカラープリンタを買った。
 この手のプリンタはDTPでは不要だったから、これまでは、ちょっとしたカラーカンプや年賀状くらいにはいいかなという程度で、少し興味はありつつも買うには至らなかった。ところが、どうやら手元でのカラープリントが必要な仕事が入ってきたこともあり、しかも値段が安くなっていたから思い切って買うことにした。

 使い始めると、いやいや〜、知らない間にずいぶん進化してたのね、というのが率直な印象だ。もちろん色校なんかには使えないが、それなりのカラーカンプにはなりそうだ。さっそく、手元で完結できるちょっとしたパンフレットにカラー画像をプリントして喜んでいた。
 もっとも、画像はまだしも、文字はレーザープリンタを使った方がはるかにピシッと決まる。で、文字はレーザープリンタ、画像はカラープリンタと2度刷りをするのが効果的なようだ。少し手間だが、仕上がりにちょっとばかりこだわろうとすると仕方がない。

 ところが、いろいろ試しているうちに、写真を貼り込むようになってどうもプリントが粗いことが気になりだした。
 僕は当初、DTPと同じ感覚でいた。画像はカラーモードがCMYKのEPS形式がよいのだと思っていた。買う前、実際に使っている人からは、TIFF形式でないとうまく出ないと聞いていた。EPS形式だとガタガタになるというのだ。はたしてその通りだった。
 しかしTIFF形式でプリントしてみると、色がまったく違ってしまう。ネットで、EPS形式のJPEGエンコードがよいという情報を得たのでそうしてみた。確かにTIFF形式に比べて色が近い。なるほどとしばらくはそれでいっていた。

 しかし、色はいいのだが、やはりプリントが粗いのだ。ハッキリ言ってひどい。ところがマニュアルを見ても、不思議なことにどんな形式のファイルが扱えるのか書いてない(見つからない)。
 ということはひょっとして、と思ってPICT形式にしてみることにした。PICT形式になると、カラーモードはCMYKではなくてRGBになる。えっ? と思ってマニュアルをよく見ると、プリンタドライバがRGBをCMYKに変換するという。
 半信半疑でファイルをPICTに変更。すると、おお! 美しい! 600dpi程度のモノクロプリンタよりクオリティは高いのではないかと思えるほどの仕上がりだ。そうか、QuickDrawプリンタはPICTファイルが標準なのだ。

 しかもこれ、驚くことに数MBのファイルをいくつも貼っているのにプリントが早い。1枚あたりのプリント時間はもちろんレーザープリンタの方が早いが、データを送るとすぐにプリントし始めるので、トータルの時間ではカラープリンタの方が早い感じがする。プレビュー画像をプリントしているのかとも思ったが、解像度によって仕上がりも違うので、そうでもないようだ。このあたりはまだわからない。
 しかしまあ、ようやくプリント画像のクオリティに関する疑問が氷解した。あまりにうれしかったから、1年以上放ったらがしていた去年の学生時代の同窓会の報告新聞を、今度こそはカラー写真入りで作ろうと思っている。

 ところで、画像のプリントはPICTが標準だとわかったことで、思うことが二つある。
 ひとつは、やっぱりDTPにQuickDrawプリンタは向かないということ。DTPではPICT形式のファイルはまず扱わない。EPSかTIFF形式、カラーモードはもちろんCMYKが基本だ。カラープリンタできれいにプリントするためにPICT形式にしていると、出力にまわす際にそれらのファイル形式を全て変換する必要がある。これは手間だし間違いのもとだ。最初から出力に合わせておく方が間違いが少ない。
 カラーカンプとして使うなら、多少プリントが粗くてもEPS形式のJPEGエンコードかTIFF形式にしておく方が無難だろう。PICT形式を使うのは、手元で完結するものに限りたいものだ。

 もう一つは、世間ではこうしたカラープリンタがあふれているわけだから、画像原稿をデータで入稿する際にPICTでRGBというファイルが多くなるのは想像に難くないということだ。幸い僕のところに画像データが持ち込まれるケースは少ないが、「データ入稿『困ったちゃん』プロジェクト」で関心のあるところだから、これがわかったのはずいぶん役に立つような気がする。
 しかし、プロのDTPの現場で使われている機械と、パーソナルな分野で普及している機械にこんなに違いがあるのだから、持ち込まれるファイルに「困ったちゃん」するのは、当分はなくならないようだ。

(記/1998.9.19)

※これをアップした後、カラープリンタのファイルの扱いについてのからくりや、いくつの用語の使い方の間違いなどを「DTPフォーラム」で指摘していただいた。このひとりごとは、書いた時点での私の認識の反映なので基本的にはそのまま残すが、最小限の用語の間違いなどを訂正したほか、タイトルも少し変えてみた。詳しい情報をいただいた野本夏俊氏に感謝。(1998.9.21)


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