京都は伏見だけでも20を超える酒蔵がある酒どころ。そんな京都府内の地酒を飲みながら、リアルタイムで綴るお酒の話。
おおむね月1更新。飲み手・書き手=小国文男
栓を開けるとこぼれる吟醸香。コップに注ぐと、ごく淡いブロンズの液体には見るからにトロリ感がある。口に含むと思わず「うおっ!」と声が出た。濃い。芳醇。ぶどう? 心地よい甘みが口に広がる。
改めてラベルを見て納得した。米は「祝」だった。その「無ろ過生原酒」だ。祝は少し甘めに出るらしい。それを無理に辛口にするより、米のもち味を活かして仕上げている感じがする。そこに共感できる。
このお酒、娘が初夏の頃に買ってきたものだった。4か月余り、ずっと冷蔵庫で眠っていた。気にはなっていたが、さすがに勝手に飲むわけにもいかない。とはいえ目の毒。ついにしびれを切らして「ちょっともらうで」と声をかけて飲んだのだ。
だから、たぶん一度は見ていたはずだが、細かなことは忘れていた。祝米ということも、山廃仕込みということも、頭にはなかった。それでビックリしたが、納得もしたという次第。
蔵元サイトを見ると、レギュラーの純米吟醸「祝」は、山廃モトを使ったものと、協会7号酵母による速醸とのブレンドらしい。これはブレンド前の単独の無ろ過生原酒で、山廃モトを使った方だ。
そしてこれらは「甘口純米吟醸」と分類されている。
まあ、甘いものは甘いとハッキリ言った方がスッキリするのかもしれない。日本酒はやはり、少し甘いくらいが旨いとも思う。
辛い酒を楽しみたいときは、蒸留酒を飲めばいいのだ。実は僕もこの頃、ウイスキーに親しみ始めている。
祝米はもともと伏見で使い始められ、「英勲」の斎藤酒造などが先駆的な役割を果たしてきたと聞く。少しずつ使われる範囲も広がってきているようだが、伏見とは違う京丹後の水だとどうなるのか、ちょっと興味があった。
もちろん、ふるさと京丹後の水に違和感はない。そればかりか、濃厚中口の「井筒屋伊兵衛」を彷彿とさせる衝撃があった。
なんだか目が覚めた気分。
【データ】
玉川「自然仕込」純米吟譲 祝 無ろ過生原酒(山廃)
醸造元:木下酒造有限会社
製造年月:2012年5月
原材料名:米・米こうじ
原料米:祝(京都府)100%
精米歩合:60%
仕込水:城山の湧き水を使用
アルコール分:17度以上18度未満