今月もまた油長さんの企画の酒蔵見学に参加して「富翁」の蔵元・北川本家を訪ねたが、その帰りに同蔵の直売店「おきな屋」で買ってきたのがこの「吟麗」だった。
コップに注ぐと、一見して無色透明かと思ったが、白い紙を下にして透かして見ると、ほんの少し黄みがかっていた。
香りは穏やかだが、さわやかな感じ。香りのくさみとでも言ったらいいのか、このところ気になる香りがあるのだが、口に含んだときに、かすかに似た香りがするような気がした。
香りの要素として酵母が大きいと聞く。このお酒の「協会9号」というのも、少し気になるところだ。機会があれば、酵母の香りもかいでみたいものだと思う。
ラベルにもあるが「端麗辛口」だ。そういえば、見学後の懇談会で蔵元の専務さんとこんなやりとりがあった。
「伏見のお酒の傾向として、最初少し甘く感じるのに、次第に辛くなっていく気がするのですが……」
「香りで甘く感じるようですね」
これはかなり納得。実は辛口なんだけれども、芳醇な香りで少し錯覚するのだろう。飲むにつれてその感覚が鈍感になり辛く感じるようになるのだとしたら、先月の松本酒造の見学での話とも通じる。
「僕はそういうの、わりと好きなんですよ」
「甘味は旨みに通じますからね。……これまで少し『端麗辛口』にシフトしすぎたかな、という思いはあります」
かなり端折ったが、だいたいこんな感じ。作り手のトレンドも「旨み」なら僕は歓迎だ。
もっとも、このお酒は最初から「端麗辛口」だ。そういうコンセプトで作られたと思える。そやそや、辛口なら試してみよう、いつものポールウインナー。さっそく冷蔵庫から取ってきて、少しかじってお酒を口に含んでみたが、ははは、合わなかった。
これまたそういえば、この蔵のお酒は京料理を食べながら飲むという前提で作っているという話だったと思う。ポールウインナーで飲むなんて、きっと予想外なのだろう。
振り返ってみると、秋に飲んだこの蔵の「ひやおろし」は、香りもけっこう豊かで「旨み」を感じたお酒だった。するとこの「吟麗」は、この蔵のなかでは少し前のタイプに属するのかもしれない。
(記/2006.12.25)
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