[ひとりごと(1998.5.2)]

いま「困ったちゃん」がおもしろい

 フロッピーや電子メールなど、デジタルデータで原稿が入ってくるケースが増えている。生原稿から文字入力することに比べると大きく省力化されるので、現場としてはありがたい。執筆者にとっても、自ら書いた通りにでき上がるので喜ばしいところだろう。
 ところがこれらのデータが実はなかなかくせ者で、そのままではデータとして使えないということも少なくない。仕方がないからそのデータを使えるように整形して組むことになるが、そのことでトラブルが発生しない保証はない。場合によっては、入力するよりかえって手間がかかってしまうこともあり、現場にとって「困ったちゃん」になるケースはよくある話だ。
 ミスを少なくし、仕事がスムーズに進むようにするために、入稿する側と受け取る側でのコミュニケーションがもっと図れないだろうか、そして原稿データ作成のガイドラインのようなものが作れないだろうかというのが、かねてから感じていた課題だった。

「デジタル時代の組版術」の平田さんなどインターネットでDTPサイトを運営している人たちに呼びかけて、「データ入稿『困ったちゃん』プロジェクト」が始まったのは、そんな思いからだ。あちこちの掲示板でやりとりするのでなく情報交換を一本化しようと、一週間ほど前にKOUJIさんの「DTPの壺」のページで専用BBSを立ちあげたら、反響がすごくてビックリしている。
「困ったちゃん」については、まさに「あるわあるわ」でたくさんのケースが書き込まれている。みなさん同じようなケースと格闘しているのだと、改めて認識を新たにしたわけだ。

 同時に、こうした「困ったちゃん」データに対応するTipsもみなさんさまざまにお持ちで、それらが交流されている。そのため、このボードを見るだけである程度のケースにはすぐに対応できるようになる、というメリットも生んでいる。
 そのひとつが、AppleScriptでかなり対応できるのではないかと、このボードでの情報交換を通じて新たにスクリプトを作ってくださる方の存在だ。

 つい最近、検索置換機能を飛躍的に拡大した「ちかん君」というスクリプトが公開された。スクリプターの野本夏俊さんが、ボードの情報をもとに作成されたものだが、これはかなり力強いと思う。
 多くのソフトの検索置換は、一度に一つの文字や文字例の検索と置換だろう。システムソフトエディタでは同時に三つの検索置換が可能だからよく利用したものだが、それでもなかなかの手間がかかった。
 ところが「ちかん君」は、テキストレベルで一度に大量の検索置換セットを作成できる。このセットをうまく作れば、行改行されたテキストから不要な改行コードを削除することも一発で可能だ。
 フリーソフトだし、試してみる価値は大いにあるだろう。Mac環境でしか使えないのが残念だが、以下のURLで公開されている。

http://www.linkclub.or.jp/~pca/nomoto/index.html

 まだ始まったばかりだが、このプロジェクトは最終的にまとめて公開する予定だ。媒体はホームページやPDF、もし可能なら書籍としてなど、さまざまな案があげられている。いずれにしても、実用に役立つ生きたものとして公開できればと思う。
 日々こうした「困ったちゃん」と格闘しているあなた、ぜひ一度「データ入稿『困ったちゃん』プロジェクト」のページをのぞいてみてはいかが?

(記/1998.5.2)


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